ミュージアムの女
著 者:宇佐江みつこ
出版社:KADOKAWA
ISBN13:9784040694528

ミュージアムの女

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

小川訓代 / まちなか図書館開館準備室(豊橋市)
週刊読書人2019年5月10日号(3288号)


美術館へ行き,入場料を支払い,展示室で作品を眺めていると,ふと気がつく。かたわらにひっそりと,でもしっかりと作品と我々来館者を見守っている人がいることに――。
 本書は岐阜県美術館の「監視係」として働く女性が主人公である。「監視」と聞くと何となく緊張してしまうが,来館者との会話や交流,美術館で働く人たちの普段の様子が,ほのぼのとした雰囲気で描かれた四コマ漫画なのでご安心を。
 監視係と言われても「展示室のすみっこにじっと座っている人」くらいしかイメージを持っていなかった。本書を読んで,他にも表からは見えないさまざまな業務があり独特の気遣いをしているのだと知った(図書館員だってカウンターに座ってピッと本のバーコードを読み取っているだけではないのだから当たり前の話だが)。
 展示されている作品について勉強し利用客からの(時にマニアックな)質問に備える。鑑賞の邪魔にならないように存在感を消しつつ作品の安全に細心の注意を払う。館内で見つけた虫はすべて捕獲し報告する。まだまだあるが紹介しきれないので本書で確認してほしい。
 美術館というと堅いイメージだが,この漫画ではゆるくてふわっとした利用客と美術館職員の日常を描き出している。作者の美術作品への敬意と美術館に訪れる人々へのあたたかい眼差しが感じ取れるエピソードが満載である。
 美術館だからといって構えず普段着感覚でふらっと来てほしい,作品との対話を楽しんでほしいという作者の優しい気持ちが伝わってくるところが,この漫画の一番良いところだ。
 読んでいるうちに本書の中にたびたび出てくるオディロン・ルドンの作品「蜘蛛」を見に行きたくなったが,残念ながら岐阜県美術館は2019年11月まで改修工事のため休館しているそうだ。リニューアルオープンされたら本書を持って訪れたい。