人と共に生きる 日本の馬
著 者:高草操
出版社:里文出版
ISBN13:978-4-89806-495-5

人と馬の歴史、共に歩む未来

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

菅原脩矢 / TRC 仕入部
週刊読書人2020年7月17日号(3348号)


最初に言っておくと私は馬が大好きだ。中学生の頃、馬の美しさ、力強さに魅入られてテレビで競馬観戦を始め、成人した今では自分でも競馬場に足を運ぶようになった。大学の卒論は競馬文化について書き、馬との付き合いは11年になる。大好きな馬のことをより多くの人に知ってもらえるような本を選ぼうと思い本書を手に取ったのだが、逆に自分が馬についてどれほど無知であったのかを思い知ることとなってしまった。

本書は、やはり馬好きであるカメラマンの著者が、日本全国を訪ね歩き、各地の馬を取材して歩いた記録で、『在来馬のふる里を訪ねて』、『祭りの馬』、『人と共に生きた馬たち』の三部構成になっている。

目次を見るだけで著者の移動距離の凄まじさに馬に対する熱量を感じる。在来馬のふる里を訪ねるだけで日本を縦断してしまうのだ。さて、その在来馬であるが、彼らの名前を答えられる人はどれくらいいるだろうか。日本に現存する在来馬は八種類で、ドサンコ、木曽馬、野間馬、対州馬、御崎馬、トカラ馬、宮古馬、与那国馬である。最初から八種類だったわけではなく、多くの種が時代の流れによって淘汰されてしまった。私は馬という動物は、他のどんな動物よりも人類と特別な関係を築いてきたと思っている。馬ほど世界中で乗用や運搬用に活躍し、人の歴史に影響を与えた動物はいないだろう。しかし、今日馬といえば競走馬や競技馬が主で、かつて交通や運搬などで活躍していた馬たちは機械化の流れによってほぼ姿を消してしまった。ここに紹介されている馬たちは、そんな、人と地域に寄り添って生きてきたが、戦後になり活躍の場がめっきり減ってしまった馬たちなのである。

昔から馬と共に生きてきた地域では、馬の文化を絶やさないように様々な工夫がなされている。代表的な例に愛媛県今治市の野間馬ハイランドがある。野間馬は、かつては重いみかん箱を背負い、人々と共に働いていた馬だが、現在は50頭近くが野間馬ハイランドで集団飼育されている。地元に愛され、児童たちが体験乗馬をしたりなど、郷土学習の場になっている。このように、かつては当たり前だった馬と触れ合える環境を、様々な形で蘇らせ、地域の文化として保存していく動きが全国に広がっているのである。本書では各地域の馬の歴史を紹介し、今もなお人と共に生き続けている馬の姿を教えてくれている。

第二部ではより地域に密着した『祭り』の舞台で活躍する馬が、第三部では人と馬の歴史についてさらに細部まで迫ってエピソードが語られている。日本通運がかつて総力をあげて馬産事業や馬力輸送に取り組んでいた話はぜひ一読して欲しい。

私は今まで競走馬以外の日本の馬たちが、どのような歴史を歩んできたのかまるで知らなかったが、本書を読み終えた今ではもっと勉強しなければならないと思っている。そして、人と馬が歩んできた歴史を知ることが、これから共に歩んでいく未来に繫がっていくと信じている。