住まいの生命力 清水組住宅の100年
著 者:住総研清水組『住宅建築図集』現存住宅調査研究委員会
出版社:柏書房
ISBN13:978-4-7601-5218-6

スクラップ・アンド・ビルドの先に

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

望月美和 / TRC データ部
週刊読書人2020年7月17日号(3348号)


例えば外国人居留地にのこる洋館とか、城下町に建つ武家屋敷とか、ちょっとレトロな住宅とか、そういった昔の住まいを見て歩くのが好きだ。出先でたまたま遭遇すると、吸い込まれるように中に入り、家々の装飾を眺めたり、住人の気持ちになって暮らしている様を想像してみたりする。この家はいつごろ建てられ、どんな人が住み、やがて公開されるまで、どのような歴史を経たのだろう?
 
本書は、清水組(現清水建設)が刊行した「住宅建築図集」(昭和10年、14年刊)に掲載された住宅の「その後」を調査した本である。「住宅建築図集」には明治から昭和戦前期までの間に施工された367件の住宅が収録されているが、最初の調査段階でそのうち58件の現存が確認できたそうだ。それら〝生き残った〞住宅の中から27件を取り上げて、設計図・竣工時の写真と現在の姿を引き比べ、家々の特長とともに、いかにして住まいが残されたのか、また残すためにどのような尽力がなされたのかが述べられている。
 
一読して気付くのが、住宅それぞれに異なるいきさつがあって残されているということだ。本書では、住宅ごとに「継承の経緯」が図式化され簡潔にまとめられているので、そのことがよくわかる。
 
実業家の別邸から旅館となり、保存運動のすえ市の施設として公開されるようになった「起雲閣」。一度解体されるも、残された部材をもとに移築復元、伝統和風住宅の歴史を伝える清水揚之助別邸。
 
古賀政男の邸宅は、一部を博物館内に復元することで、作曲家の住まいに対する思いを今に伝えている。
 
家族代々住み継ぐことで残っている住宅もある。とある都内の一軒家は、昭和初期に建てられたものを建て主の子世代、孫世代が引き継いでいるのだが、増改築をしても建て主である祖父の象徴ともいえる「御客間」「御居間」はできるだけ手を付けずに残しているそうだ。住人家族の、住まいへの愛着が感じられてとても印象に残ったエピソードだ。竣工時の「御客間」と現在の「御客間」を写真で見比べられるのもこの本ならではのことだろう。
 
今までの日本の住宅は、古くなったり住み手と合わなくなったりしたら、すぐに壊して建て直す「スクラップ・アンド・ビルド」という考え方が一般的だったように思う。しかし、こうした残された家々のストーリーを知ると、それでよいのだろうかという思いが浮かんでくる。家は住むもの。住む人それぞれの思いがこもった住まいを、手を加えながら大切に受け継いでいくという道もあるのではないだろうか。