弱いつながり 検索ワードを探す旅
著 者:東浩紀
出版社:幻冬舎
ISBN13:9784344425019

弱いつながり

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

亀田純子 / 神奈川県立津久井浜高等学校 図書館
週刊読書人2019年6月7日号(3292号)


 著者は近年注目の現代思想研究家であるが,本書は「ネットは階級を固定する道具です。」という挑発的な一文から始まる。そして「『かけがえのない個人』などというものは存在しません。ぼくたちが考えること,思いつくこと,欲望することは,たいてい環境から予測可能」(p.13)だとネット社会を分析する。だからこそ「環境を意図的に変え」「グーグルが与えた検索ワードを意図的に裏切ること」(p.14)で,環境がはめ込もうとする姿を自らの手に取り戻すことを提案する。そしてその具体的な方法や意味を著者のさまざまな体験をもとに述べている。
 またネットには無限の情報が溢れていると思われがちだが「だれかがアップロードしようとしたもの以外は転がっていない」(p.65)ことを強調する。その上で「言葉にならないものを言葉にしようと努力すること」(p.65)が重要だと言う。そのためには弱いつながりの関係性を保ちながら,「観光客」の視点でリアルに「旅」をする必要性を訴える。
 私事で恐縮だが,自宅から職場までに書店が1軒もない地域に住んでいると,ネット書店のお世話になることが多い。ご存知のとおりネット書店は,前回検索した本をもとに趣向にあった本を提示してくれるため,探す手間が省けて便利である。ただそれを繰り返していると,何やら不安な気分になってくる。この感覚はネットによって自分の環境を固められてしまうことに対する,まさに本能的な拒否感覚ではないだろうか。リアルな身体感覚による移動,つまり書店に出向いて本を探す作業――本書で言うところの「ノイズ」を入れること――は,やはり大切なのだ。
 本書は「哲学とか批評とかに基本的に興味がない読者を想定」(p.18)とある。SNSにどっぷり浸かっている若者にこそ読んでほしい1冊である。