ブラック・スワン 不確実性とリスクの本質 上・下
著 者:ナシーム・ニコラス・タレブ
出版社:ダイヤモンド社
ISBN13:978-4-478-00125-7

ブラック・スワン

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

髙橋将人 / 南相馬市立中央図書館
週刊読書人2019年6月14日号(3293号)


 大きな地震とともに“想定外”と称された歴史的な事故が日本で起こってから,はや7年がたとうとしている。この7年の月日は被災地に生活の足音と,別の土地にまた新しい災害を無表情に運んできた。規模の大小を問わず,まだ見ぬリスクに対して人々は知識とデータを根拠に予測を試み,未来を想定し,対策を考えている。一度切ってしまった“想定外”というカードを使うことは,もう許してもらえない。
 本書中では,現実的に起こる確率の低い,しかし起こってしまえばとてつもない衝撃を与え,なおかつ想定することが困難な事象を「黒い白鳥」と呼び,いろいろな角度から考えを深めていく。浮き上がってくるテーマは「未知の未知」や「予測の限界」等。私たちが未来の黒い白鳥に対してどう準備すべきかのヒントがあちこちに散りばめられている。ただし,そのヒントはもしかするとわかりづらいかもしれない。地図はあってもナビゲートまではしてくれない。本書においてはそのこと自体にもきちんと意味を持たせている。大災害やテロに限らず,身近なところで私たちの今の環境を大きく変えてしまう事象に,どう向き合っていくのか。拾ったヒントをパズルのように組み合わせていく体験こそが本書の醍醐味である。
 リスクに対する準備というテーマを扱った類書に『最悪のシナリオ 巨大リスクにどこまで備えるのか』(キャス・サンスティーン著 田沢恭子訳 みすず書房 2012)がある。こちらは「1パーセント・ドクトリン」の概念を採用し,主に費用対効果の面からページを進めていくが,2冊を並べることで「ブラック・スワン理論」の輪郭がよりはっきりと浮かび上がる。より多くのヒントを手元に置くために,こちらの本も(少し専門的ではあるが)ぜひお薦めしたい。