コバルト文庫で辿る 少女小説変遷史
著 者:嵯峨景子
出版社:彩流社
ISBN13:978-4-7791-2275-0

コバルト文庫で辿る 少女小説変遷史

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

三富清香 / 新潟県立図書館
週刊読書人2019年7月5日号(3296号)


 人はいつ,少女ではなくなるのだろうか。
 少女小説と呼ばれるジャンルの歴史は古く,明治期までさかのぼる。アカデミズムの世界では周縁的な小説群とされがちだが,近年も研究書が刊行されるなど,少女小説研究は定着しつつある。
 集英社のコバルト文庫を中心に戦後半世紀を総括する本書は,雑誌,文庫,現在のソーシャルメディアに至るまで,異なる発表媒体を網羅しながら個々の作品に触れ,読者共同体の変容にまで言及している点が新しい。
 本書の出版後,著者あてにかつて少女小説を愛読していた読者たちからの熱意あふれる感想が寄せられたという。私自身もまた本書を読みながら,思春期に寝食を忘れて読みふけった少女小説の記憶が懐かしさとともに細部までよみがえった。少女期に愛し,成長の過程とともに自然と遠ざかりながらも,私もまたあのころのみずみずしい感性を忘れていなかったのだと思い知った。
 時代の空気を敏感に察知しながら,目まぐるしくうつろう少女小説の変遷を一歩ずつたどりながら,著者は少女小説を貫くものを「居場所」と位置づける。現実の困難を乗り切るためにそこにあり続けてきた,切実かつ親密な居場所は,少女が少女でなくなったとしても,読者の心にあり続ける。
 かように少女小説とは,児童サービス,YAサービスの観点からも重要でありながら,読者にとって旬が短く新作が次々と刊行されるなど評価が定まりにくいことなどから,図書館員にとっては悩ましい作品群であると言える。戦後少女小説の通史を概観し,作品名とその評価を把握できる点でも,ありがたい労作である。