イラストで見る 昭和の消えた仕事図鑑
著 者:澤宮優
出版社:原書房
ISBN13:978-4562052981

イラストで見る 昭和の消えた仕事図鑑

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

横山みどり / 越谷市立図書館
週刊読書人2019年7月19日号(3298号)


 ノスタルジックな仕事のイラストが,表紙に多数描かれている。電話交換手や氷屋などはすぐに見当がつくが,精かんな顔立ちに見える鳩は,どのような職種に携わっていたのだろうか。
 鳩のたたずまいに心惹かれ,ページをめくると「情報通信」の項に新聞社伝書鳩係の記述を見つけた。関東大震災をきっかけに,各新聞社は独自に伝書鳩を飼育し,地方からの記事を集めた。仙台―東京間の場合,約300kmを4時間40分で戻り,重大スクープを運んだ鳩には,社長賞が授与されたという。電送などの通信手段の発達によって,昭和30年代半ばには出番がなくなり,電波が飛び交うように行き交っていた伝書鳩たちも,技術の発展に伴い徐々に仕事を失っていった。
 私が子どものころは,近所に養鶏場や牛舎があって温かな卵のぬくもりを感じ,搾りたての牛乳を飲ませてもらっていたが,生業のパートナーとしての動物たちは,都市部から放逐されつつある。動物と人間の関係性についても考えさせられた。
 本書は,産業分類ごとに115種類もの仕事が図鑑形式でまとめられている。バスガール,文選工,毒消し売り,活動弁士,紙芝居屋,のぞきからくり,幇間,代書屋など見開きの解説とイラストは仕事の内容を理解するうえでとてもわかりやすい。ここに紹介されている失われた仕事に就いていた人たちは,みんな懸命に働いていた。今日を生きるため,とにかく働く。読んでいるうちに,職業紹介にとどまる内容ではないことが伝わってきた。昭和という時代,高度経済成長,人々の活力,過去から現在,未来へと考えが及ぶ。はたして今日ある仕事は,いかなる変遷をたどるのであろうか。
 同著者の『昭和の仕事』(弦書房 2010)は,ある放浪詩人の職業遍歴など約140種類の仕事を紹介しており,こちらもあわせておすすめしたい。