秘島図鑑
著 者:清水浩史
出版社:河出書房新社
ISBN13:78-4-309-27615-1

秘島図鑑

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

松本和代 / 菊陽町図書館、日本図書館協会認定司書第1088号
週刊読書人2019年7月26日号(3299号)


 この本の帯には「本邦初の“行けない島”ガイドブック」とある。
 目次を見ると,これまで『Shimadas 日本の島ガイド 第2版』(日本離島センター編 日本離島センター 2004)など日本の島について書かれた本の中でもそれほど詳細に表記されてこなかった無人島などが紹介されている。
 島国である日本には,6,800もの島々がある。この本には,一般の公共交通機関がなかったり,住民がいない“秘島”について,面積等のデータだけでなくアクセス方法,島の歴史,写真,地図まで書かれている。さらに,島の説明だけではなく,どうしたら“秘島”を身近に感じることができるか実践編まで書いてある。
 東京都の硫黄島(p.58)は,太平洋戦争末期に住民が強制疎開させられ,映画『硫黄島からの手紙』で多くの人が知ることとなった島である。激戦の地となったこの島にはいまだに元住民は帰島できないが,自衛隊や施設工事関係者など400人も駐在していることは知られていないだろう。
 行けない島のことを知って何になるんだと思う方もいるかもしれない。しかし,絶海の孤島は,気象観測地でもあり,国境,軍事面での要所なのだ。硫黄島のように戦争の惨禍に見舞われた島,西之島(p.54)のように現在も度重なる噴火活動で拡大し続け,地球が生きていることを実感させる島,臥蛇島(がじゃじま)(p.74)や八丈小島(p.78)など高度経済成長に取り残され,過疎化が進み無人にならざるを得なかった島々の現実を知ることは重要である。
 四方を海に囲まれている島国ならではの,日本が抱えているさまざまな問題について,考えさせられる1冊である。