むし学
著 者:青木淳一
出版社:東海大学出版会
ISBN13:978-4-486-01916-9

むし学

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

山本輝子 / 埼玉県立久喜図書館
週刊読書人2019年8月2日号(3300号)


 ジャポニカ学習帳の表紙から虫が消えた。虫は不潔で気持ち悪い,昆虫採集は環境破壊だ,反対だという意見もあるそうだ。そんななか「なんといわれようと,私は昆虫採集を子供にも,大人にも勧める」(p.74)と言い切る,ダニ研究の第一人者が著した「むし学」への愛とユーモア溢れる1冊を紹介する。
 本書は,虫の研究に興味のある人に向けた「むし学」入門書である。虫とは何かを漢字を絡めてわかりやすく説明することに始まり,虫の生態,人間と虫の関わりなど,広い視点で,昆虫以外も含めた「虫」について説明している。新種の和名に命名者の名を付けると顰蹙を買うので,恩師の名前から「ヤマサキオニダニ」と付けたら鬼とは何かとこれまた顰蹙だった,などという虫嫌いにも面白い話題が満載だ。また実用に際した知識が多く,昆虫採集時の持ち物や方法についても詳しく説明している。失敗を織り交ぜて語る経験談は,直接教えを受けているようで親しみやすい。
 本書からは,虫を愛し研究を楽しむ著者の熱意と活力が伝わってくる。「○○学部に入って,○○をテーマにしたほうが,将来良い職業にありつけ,楽ができるだろうなどという考えは捨てたまえ。どんなに良い境遇にあっても,仕事を嫌々やっていたのでは,芽が出るはずがない。」(p.112-113)人生は一度きり,やりたいことをやるべきだ,というありふれた言葉も,言行一致の著者が言うからこそ素直に受け止められる。
 表紙は明るい黄色一色の地に,「むし学」とタイトルがあるのみ。シンプルな表装は,虫に興味がない方も気軽に手に取りやすいはず。読めば思わずクスリとしてしまうこと請け合いだ。