われらの子ども 米国における機会格差の拡大
著 者:ロバート・D・パットナム
出版社:創元社
ISBN13:978-4-422-36001-0

われらの子ども

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

戸田久美子 / 同志社国際中学校高等学校
週刊読書人2019年9月13日号(3306号)


 日本の子どもの貧困率(2015年調査)が, 13.9%に改善されたという報道があった。進学,食事,日常生活の物資など,子どもたちが苦しんでいる現状を,社会は少しずつ理解して支援の方法を模索している。 今後この問題に対してわたしたちは「何をすべきか」,本書がその指針を与えてくれる。
 『孤独なボウリング』(柏書房 2006)でアメリカの社会関係資本の衰退を分析した著者が,今度は経済格差が子どもたちの機会格差を生むことを,実例を示しながら解き明かしてくれた。恵まれた子どもと貧困下にある子どものライフストーリーが対比的に紹介され,多様なデータと図表の分析も加えられたことで,興味深い内容となっている。
 著者の故郷であるオハイオ州ポートクリントンでは,半世紀前の子どもたちには経済格差を自らの能力で乗り越える機会があった。しかし2010年代に入ると, 経済格差はそのまま機会格差につながるようになった。この,時代の変遷の中で機会の不平等が生み出されていく様子は,アメリカ全土だけではなく,日本にも通じるものを感じる。
 そして本書は,「貧富の格差」が,家族(2章),育児(3章),学校教育(4章),地域コミュニティ(5章)といった要因に合わさることで,「子どもたちの成長過程を大きくかけ離れたものにする」(p.319)ことを説明する。この問題への「単純で即時的な解決策はない」(p.290)ことは,全米各地の若者とその親たちの証言例からわかる。
 日本の大人も子どもたちも,「ほとんどは同じような苦境に直面することはない」(p.258)。しかし,だからこそ,苦境下の子どもたちを「われらの子ども」のひとりとして考え,彼らが将来の希望を持てる公平な機会を保障することは,日本においても必要である。図書館はそのための機関である。
 著者は,共に感じ考えることを呼びかけている。