日本まじない食図鑑 お守りを食べ,縁起を味わう
著 者:吉野りり花
出版社:青弓社
ISBN13:978-4787220660

日本まじない食図鑑

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

山下樹子 / 神奈川県立図書館
週刊読書人2019年10月11日号(3310号)


 占いやおまじないの本は図書館にどのくらいあるのか?と思い調べてみると,児童書が圧倒的に多い。大人の方が悩みは深いのにと思いつつ,占いやおまじないの本が並ぶ哲学・思想の書棚ではなく,民俗学の書棚で出会ったのが本書である。
 タイトルにある「まじない食」とは「神事,仏事,伝承行事のなかで何かの願いを託してお供えされる食材,食べられる料理(p.14)」である。まじない食に託される願いは病除け,厄除け,安産,子供の健やかな成長,豊作,大漁が主なものである。
 例えば,埼玉県の「お諏訪様のなすとっかえ」は茄子を食べることで夏の毒消しになり,京都府了徳寺で12月に行われる「大根焚き」の大根を食べると病気にならないという。福岡県の「早魚神事」は鯛をさばく速さを競うものであり,その切り身は安産のお守りになる。香川県の「八朔の団子馬」は男の子の健やかな成長を祈る団子であり,子宝を願う縁起物でもある。岩手県の「馬っこつなぎ」ではワラ馬に「しとぎ団子」という団子を供えて豊年満作を祈る。最も感動したのは鳥取県の「うそつき豆腐」だ。12月8日に豆腐を食べると一年分の嘘が帳消しになるというものだ。まじない食,おそるべし。
 本書には「まだまだある,全国の食べるお守り・まじない食」という巻末資料もあり,21種類のまじない食が紹介されている。世間のほとんどの悩みに寄り添う豊富なラインナップである。食べることは生きることにつながる。「まじない食」は,悩む人が「何かを食べよう」という気持ちになり,生きる力を与えてくれる存在だと思った。
 本書は,まじない食を通して日本の豊かな食文化を伝えるとともに,原風景といえるような美しい自然を訪ねる旅の書でもあり,手に取りやすい。誰もが頼ることができるおまじないの本がある書棚=すべての人を否定せずに受け入れてくれる書棚作りにぴったりの本として薦めたい。