となりのイスラム 世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代
著 者:内藤正典
出版社:ミシマ社
ISBN13:978-4903908786

となりのイスラム

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

橋本紗容 / 洛星中学・高等学校図書館
週刊読書人2019年11月8日号(3314号)


「世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代
仲良くやっていきましょう。
テロ,戦争を起こさないために-
大勢のイスラム教徒と共存するために-」
 帯に書かれた言葉に著者の願いが表れている。
 この本は,これまで関心を持ってこなかった人を意識して作られているのだろう。可愛らしい表紙と,語り口調の本文がそれをうかがわせる。
 著者は,1990年代からヨーロッパのトルコ移民の研究をしてきており,第1章ではそれを元に西欧諸国とイスラムの衝突について述べている。各国それぞれに事情が異なるものの,移民たちは居場所を見つけられず再イスラム化が進行。一方で,ヨーロッパ諸国の側からは,同化しないイスラム教徒に対する差別・攻撃・排除が繰り返される。これについては「ヨーロッパの市民よ,これ以上衝突を起こすなかれ。」(p.52)と訴える。
 遠く離れた日本では,イスラム教に対して西欧世界経由の“戒律が厳しい”というイメージやテロへの不安がある一方で,来日するイスラム教徒の増加を商機とみて「ハラール・ビジネス」の成長が目立つ。この状況に対して,著者は,一般の日本人が抱きがちな疑問に答えつつ,「ハラールかどうかを決められるのは神様だけ」(p.105)と苦言を呈する。
 テロ,特に「イスラム国」については,「イスラム世界から生まれた“病”」(第7章)ととらえてイスラム世界の問題点について見解を示している。
 「イスラム世界と西欧世界とが,水と油であることを前提として,しかし,そのうえで,暴力によって人の命をこれ以上奪うことを互いにやめる。そのために,どのような知恵が必要なのかを考えなければなりません。」(p.7)
 この考え方は,イスラムに限らず各地で起こる諸問題にも当てはまるのではないだろうか。