ブルーシートのかかっていない被災直後の熊本城
著 者:矢加部和幸、浜崎一義写真撮影
出版社:熊本城復興を支援するみんなの会発行/創流出版発売
ISBN13:978-4906897384

ブルーシートのかかっていない被災直後の熊本城

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

津留千亜里 / 熊本県立図書館,元熊本県立八代高等学校・中学校図書館
週刊読書人2019年11月22日号(3316号)


 2016年4月に発生した熊本地震からまもなく2年。記憶や恐怖心は徐々に薄れていくものだと思っていたが,不思議なことに,時間が経つほど地震に関する報道や著作物を目にすることが苦痛になってきている。
 本書は被災した熊本城を撮影した47ページの写真集である。撮影日は4月16日。本震と言われた激震に見舞われた日である。今はブルーシートや工事用の幕に覆われ目にすることができない惨状の記録と,それと比較できるよう被災前の写真も掲載されている大変貴重な写真集である。県民として決して見たくはない熊本城の姿だが,「事実の記録」に徹した編集だからか,民家や道路や橋といった日常生活を感じさせる場所ではないからか,今の私が手に取ることができる唯一の地震関連図書である。撮影した矢加部氏は元熊本日日新聞記者で,「城はどうなってしまったのか」と,いてもたってもいられず駆けつけたという。
 私にこの本を開かせる理由のもう一つは,氏の行動に抱く尊敬の念と同時に覚える共感かもしれない。あの時,「記録しておかねば」という,氏が感じたであろう使命感を私たち学校司書も抱いたからである。「片づける前に写真に撮っておこう」という声が地震発生後,自然発生的に各地区であがった。熊本県高等学校教育研究会図書館部会が実施した被災アンケートには,140枚もの写真が集まった。もし生徒がそこにいたらと想像すると慄然とする写真ばかりである。調査をまとめた記録集は2017年度末に発行され,各都道府県立図書館に寄贈予定である(現在は寄贈済みである)。
 地震発生の瞬間まで,熊本が「震災前」だったとは想像もしなかった。今,多くの方が地震前の私たちと同じ思いで過ごされているのではないだろうか。ぜひ一度目にしていただけたらと思う。