誰がアパレルを殺すのか
著 者:杉原淳一
出版社:日経BP社
ISBN13:978-4822236915

誰がアパレルを殺すのか

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

神戸牧子 / 土岐市役所,元土岐市図書館
週刊読書人2020年1月3日号(3320号)


 人が朝起きて学校や仕事に行く,または,出かけるとき,顔を洗い朝食をとり,身支度をする。朝食を端折っても着替えを端折る人は,まずいない。そして,目覚めたときの気分や空模様,また,仕事内容によって,当日の服装を決めるだろう。心待ちにしていた外出の際の着替えは心躍り,その服は記憶に残るに違いない。
 では,人にとって衣服とは,どのくらい意味のあるものなのか。着たきり雀でも,人は生きていける。ただ,「衣食住」という言葉に表されているように,社会生活を営む上で人と衣服は切っても切れないものなのである。
 本書はそんな衣服を巡って,大きな転換期を迎えているといわれるアパレル業界を取り上げている。DCブランドブーム全盛期の華やかなりしイメージは既に過去のもの,もはや,当てずっぽうに「作って」「売る」散弾銃商法は通用しない。そして,それはアパレルのみならず,他の業界にも通ずる論理のように思える。
 すべてが「売れなくなった」のではない。「売れる」ものと,「売れない」「売れ残る」ものがはっきり区別されているのだ。では,その違いは何なのか。業界の川上と川中,川下での景色の違いが,今後変化することはありえるのか。SCMの成功例ユニクロでおなじみのファーストリテイリング柳井正氏や,セールなし,生地は端切れまで,テキスタイルのアーカイブや別注商品を有効活用するというミナペルホネンの皆川明氏,オンラインSPA新興勢力への取材が興味深い。
 業界全体を俯瞰し,ピンチをチャンスに変え,悪習や不合理と決別する。今こそ,「アパレルは死んでいない」と,新しいビジネスモデルを他業界に示す絶好の機会だ。必要なものを見極め提供するという点では,図書館も同様に思える。アパレル業界の今後の展開に注目したい。