健康格差 あなたの寿命は社会が決める
著 者:NHKスペシャル取材班
出版社:講談社
ISBN13:978-4062884525

健康格差

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

谷口美和 / ふじみ野市役所,元ふじみ野市立大井図書館
週刊読書人2020年1月24日号(3323号)


 センセーショナルな題名だ。寿命とは訪れるものではなく,社会から決められるものなのか。
 寿命に影響を及ぼすものとして何を思い浮かべるだろう。例えば生活習慣病やがんであれば,食事と運動などの生活習慣や遺伝的要因と考えるのではないか。そして生活習慣病になるということは,自らの健康管理を怠ったゆえの結果であり,中高年の問題と考えはしないだろうか。
 本書において,30代で糖尿病を発症し寝たきりに近い生活を送らざるを得なくなった女性の例を始め,これは中高年だけではなくすべての世代の問題であり,「所得」「雇用形態」「家族形態」「地域」といった個人の責任のみに帰すことができない要素が寿命に結び付く健康格差となっており,命の格差ともなっていることが示されている。
 テレビ番組の制作過程の取材に大幅な追加取材を加えて執筆された本書は,貧困や健康上の困難を抱えた人,医療者,自治体職員のほか研究者の声を取り上げている。また番組中の「自己責任」か否かについての討論の様子が紹介されており,読者自身がこの問題をどう捉えるのか問われることとなるだろう。いずれにせよ健康格差を自己責任論で切り捨ててみても,結局は自分自身や社会全体に帰ってくるということだけはわかるのだ。
 図書館で働くということは,少なからず超高齢化社会,雇用問題,貧困,社会的孤立といった問題の渦中にいる人々と向き合うことなのだということを忘れてはならない。また,区民全体の野菜摂取量を増加させた足立区の取り組みの成功例や,人々や組織のつながりを「資源」ととらえるソーシャル・キャピタルと健康との関連等が示されており,未来に希望をつなげるために自分自身あるいは職業人としてなすべきことについて,考える一助となるであろう。