名画の中の料理
著 者:メアリー・アン・カウズ
出版社:エクスナレッジ
ISBN13:978-4767824031

名画の中の料理

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

緒方仁子 / 福岡県立太宰府高等学校
週刊読書人2020年2月7日号(3325号)


 皿に美しく盛り付けられた料理は,キャンバスに描かれた絵画のようだ。この本はまさにそんな一冊である。
 書名から,名画に描かれている料理を解説した本だと思いきや,そうではない。有名なものから無名のものまで,料理に関するさまざまな絵画やレシピだけではなく写真や日記,詩や散文からの引用なども紹介されている。
 例えば,マネの絵「アスパラガスの束」にはプルースト著『失われた時を求めて』からの引用と,画家ジョージア・オキーフによるワイルドアスパラガスのレシピが添えられている。セザンヌの「3個の梨」にはセザンヌ自身の梨のデザートレシピ,マネの「レモン」はチリの詩人パブロ・ネルーダの詩と共に載せられている。
 天才ピカソやレシピ本を出版するほど料理好きだったというダリの絵画やレシピ,エピソードも多い。
 前菜から始まり,スープ,卵,肉などと続きデザート,飲み物で終わる章立ては,まさにフルコースで料理を味わっているようだ。
 各章の最初で著者が紹介しているエピソードも興味深く,次に続く作品がより楽しめる内容になっている。
 取り上げられている作品は,19世紀から現在までの食べ物にまつわる文学や詩の引用,レシピ,静物画,写真と多岐にわたるが,その組み合わせが絶妙で,読みながら本当に料理をしているような,料理を前にしているような,画家や詩人たちと食事を楽しんでいるような気分になってくる。
 出てくる料理は主にヨーロッパやアメリカの人々にとっての家庭の味であったり,ごちそうであったり,中には日本人である私には想像もつかないようなものもある。気になるレシピに挑戦してみるのもいいかもしれない。