ビブリオテカ 本の景色
著 者:潮田登久子
出版社:ウシマオダ発行、 幻戯書房発売
ISBN13:978-4864881180

ビブリオテカ

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

神原陽子 / 埼玉県立久喜図書館
週刊読書人2020年2月7日号(3325号)


 本書は,写真家潮田登久子が1995年から撮り続けてきた「本」の写真をまとめたものである。取り上げられているのは,中世ヨーロッパの祈祷書,重厚な革装の稀覯本,近世の和装本から近代の子どもの本までと幅広い。本の置かれた場所も,個人の書斎や図書館の収蔵庫,古書店などさまざまである。著者は,オブジェとしての本だけでなく,本をめぐる環境にも魅せられている。タイトルの「景色」はここから来ているのであろう。
 紹介する際のカテゴリ分けもユニークである。「手稿」や「活字」,部分に注目した「面」「背」「天地と小口」,形態による「豆本」「分厚い本」「痩身」。また内容から見た「日本を旅行する」「美女と美男」,さらには本の行く末について考える「修復」「死亡」など,AからZまで26のテーマのもと,いろいろな本の景色が登場する。次のページに何が現れるのか,わくわくさせられる。
 図書館の特別資料室で整然とならんでいる本もあれば,表紙がボロボロと崩れ角は折れ,形がゆがんで自立しない本もある。蒐集した持ち主を失い雑多にならぶ本,おびただしい付箋がはさまれた辞書,包帯をまかれて書架で修復を待つ本…。モノクロ写真から浮かび上がるのは,本がまとっている,過ごしてきた時間の層だ。そこには不思議な美しさがある。モノとしての本が,どんな場所に収められ,誰に読まれ,大事に引き継がれ,いつの時代の空気を吸って今にいたったのか。本がたどってきた人生を感じさせる。
 日々,多くの本に囲まれて仕事をしていると,個々の本に目が向かなくなることがある。そんなとき,ふいに森から木にピントが移るように,一つ一つの本を慈しみたくなる写真集である。
 前作『みすず書房旧社屋』(ウシマオダ 2016)に続き,本作も高い評価を受け,2018年「土門拳賞」を受賞している。