描かれたザビエルと戦国日本 西欧画家のアジア認識
著 者:鹿毛敏夫
出版社:勉誠出版
ISBN13:978-4585221562

描かれたザビエルと戦国日本

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

中村知美 / 栄光学園中学高等学校図書館
週刊読書人2020年2月14日号(3327号)


 ザビエルときいて最初に思い浮かべるのは胸の上で手を交差させ少し上を向いている肖像画ではないだろうか。恥ずかしながらカトリック学校に勤めるまで私はこれくらいの印象しかなかった。
 この肖像画は17世紀初めに描かれた「聖フランシスコ・ザビエル」という作品で神戸市立博物館に所蔵され重要文化財である。ザビエルの手元にあるハートは「燃え上がる心臓」であり煉獄からの救済を暗示しているのだとこの本で知った。
 Ⅰ章では17世紀初頭ポルトガル人画家アンドレ・レイノーゾとその工房による20点の連作油彩画が解説されている。イエズス会の誕生の場面から布教のため出帆し航海の様子,インドを経て日本での活動,中国で亡くなるまでを描いており,ザビエルの生涯を追うことができる。この中で日本を描いているのは3点あるが,かろうじて和服にみえる着衣の他は建物は完全に西洋風で,喜望峰を回る航海ルートが確立され既に交易をしていたインドに比べると正確に認識していなかったように判読できる。
 Ⅱ章以降はザビエルの出身地のバスク地方の歴史,日本での大名との面会,ザビエルが去った後の豊後国府内(現在の大分市)で教会・育児院・病院が設立されるなどキリスト教の発展,ポルトガル人による東南アジア・中国への海上貿易,宗教画についてとさまざまな視点で語られる。B5サイズで図版も大きくカラーで掲載されとても見やすい。これまでの先行研究にも言及しており導入的な1冊としても読める。世界史・日本史・美術史・宗教史と点々としていた知識が改めて編まれつながっていくように感じた。
 2018年「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界遺産に登録された。ザビエルが日本に滞在したのは戦国時代後期1549年からわずか2年3か月だったが信仰は確かに根付いている。