絶滅の人類史 なぜ「私たち」が生き延びたのか
著 者:更科功
出版社:NHK出版
ISBN13:978-4140885413

絶滅の人類史

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

関根真理 / 東京都立大江戸高等学校
週刊読書人2020年3月6日号(3330号)


 現在,世界に人類は「ホモ・サピエンス」しかいない。チンパンジーと共通の祖先から分化して700万年の間にわかっているだけで25種もの人類がいたが,すべて絶滅してしまったのだ。この本はこの700万年の人類の歴史を,最前線の研究をもとに素人でも大変わかりやすく書いてある。
 人間は現在地球を制覇している。環境問題を引き起こし,他の生物を絶滅に追いやるほどの傍若無人ぶりだ。しかし,誕生したころの人類はひどくひ弱な存在だったらしい。豊かな森にいれば,捕食動物もおらず,果物などの食料も豊富だった。でも,気候が乾燥化して森林が減った時,他の類人猿ほど木登りがうまくない人類は,森を追われ,疎林という危険な場所で生活せざるを得なくなってしまったのだ。そこで人類は「直立二足歩行」への道を歩んでいくのである。「直立二足歩行」へと進化を遂げたのは地球の長い生命史の中で後にも先にも人類だけなのだそうだ。なぜなら,「直立二足歩行」には,捕食者に見つかりやすい,走るのが遅いなどデメリットがあったからだ。それなのに,なぜ人類は「直立二足歩行」になったのか? メリットはあるのか? なぜこの弱っちい動物が地球を制覇することなどできたのか? 発掘された骨や石器,現在のヒトや類人猿のデータなどから仮説をたて類推していく過程はまるで,推理小説を読んでいるような面白さがある。
 そして,意外だったのが,人類は本来仲間と争うことを好まない「平和な生物」なのだということ。「血塗られた歴史」は人間の本性ではなかったのだ! 「人間は一人では生きていけない」とはよく言われることだが,人類の進化の歴史を考えると「なるほど」と納得できた。私のように「理系」の本は少々苦手な人でも一気に読める本だ。数々の偶然と運も重なった,人類進化の歴史は本当に面白い。