世界を変えた100の化石 大英自然史博物館シリーズ1
著 者:ポール・D・テイラー、アーロン・オデア
出版社:エクスナレッジ
ISBN13:978-4767824970

世界を変えた100の化石

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

柴田わかな / 名古屋市名東図書館
週刊読書人2020年3月13日号(3331号)


 今夏の暑さは異常であった。「命に関わる」という言葉を耳にするたび,暗い疑問が頭をよぎった。温暖化の進行によって,いずれ人類は滅びてしまうのではないだろうか,と。
 けれども,大規模な気候変動は,地球の長い歴史から見れば決して珍しいことではない。化石は昔の地球の姿や,そこで起こった出来事を教えてくれる物言わぬ証人である。化石を調べることで,地球という一つの生命体が,はるか昔から寒冷化と温暖化を繰り返してきたこと,そうした環境の変化を背景に,生物たちが進化と絶滅のドラマを繰り広げてきたことがわかる。
 この本は,大英自然史博物館のコレクションを中心に,微生物から始祖鳥,人類の祖先にいたるまで,生命史の節目を語る100の化石を紹介した本である。著者は同博物館の学芸員と古生物学者。美しい化石の写真とともに,その生物がどのように誕生し,滅んでいったのか,ウイットに富んだ解説で楽しませてくれる。また,時系列にそって化石が並んでいるため,ページをめくるごとに生命進化のドラマが目の前に繰り広げられるようである。たった一つの化石が,生命史の穴を埋める重要なミッシングリンクとなることもあれば,これまで信じられてきた常識を覆してしまうこともある。この本を読むと,生物の世界には絶対的な真理や常識など存在しないのだと感じさせられる。
 さて,地球上に誕生した99%の生物種はすでに絶滅しているが,何億年も形を変えずに生き続けているカブトガニのようなものもいる。著者はその形態の完全性を,「壊れていないものは直すな」という英語のことわざで表現している(p.113)。果たして人類は壊れているのかいないのか。数百万年後には,答えが出ているかもしれない。