健康・医療の情報を読み解く 健康情報学への招待 第2版
著 者:中山健夫
出版社:丸善出版
ISBN13:978-4621087329

健康・医療の情報を読み解く

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

川崎かおる / 岩手医科大学附属図書館
週刊読書人2020年3月20日号(3332号)


 「失って初めて健康のありがたみがわかった」とはよく聞く言葉だが,普段,健康を意識して生活している人はどれくらいいるだろうか。健康とは,身体的,精神的,社会的に満たされた状態のことであり,その情報を読み解く力を「ヘルスリテラシー」と呼ぶ。日本人のヘルスリテラシーは他国に比べ低いことが複数の調査結果で示されているが,海外では幼児からヘルスリテラシー教育を実施している国も多い。健康・医療情報は最も身近なものであるにもかかわらず,日本においては敷居の高いものになってしまっている。ヘルスリテラシーには,具体的に健康・医療情報の「入手」「理解」「評価」「活用」などのスキルが必要で,本書はその習得の一助となるものである。
 医療・健康情報にはエビデンス(根拠)が必要とされ,それを見極めるには,統計学,疫学などの知識が必要となる。既に難解な言葉が並び,拒否反応が出る方もあるかもしれないが,著者は身近な例を挙げ,専門知識を意識せずに情報の見方,判断の仕方をわかりやすく解説している。例えば,「胃がんの原因となる食べ物について調べたところ,唯一全員が食べていた物は米であった。よって米は胃がんの原因と考えられる。この推論の落とし穴は何か」など,読むことで自然と考え方を学べる流れになっている。
 ヘルスリテラシーを身につけ,より質の高い情報を入手できるようになることで,健康の維持,病気の予防・治療などについての意思決定を助け,生活の質の向上に役立てることができる。健康に不安があり,雑誌やテレビの広告が気になっている方にこそ,本書を手に取っていただきたい。ポイントは「きちんと疑うこと」で,「ものの『疑い方』を学ぶことは,その『信じ方』を学ぶことでもある」(p.191)という言葉が,ヘルスリテラシーの本質を表している。