オムライスの秘密メロンパンの謎 人気メニュー誕生ものがたり
著 者:澁川祐子
出版社:新潮社
ISBN13:978-4101206813

オムライスの秘密メロンパンの謎

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

髙井陽 / 新宿区立こども図書館
週刊読書人2020年4月3日号(3334号)


 最初に,この本は『ニッポン定番メニュー事始め』(彩流社,2013年)の改題であることをお断りしておく。
 この本の目次には「カレー」や「生姜焼き」など,日本人なら誰もが一度は口にしたことのある料理が表題を含めて28種類ほど並んでいる。著者は,それらがいかにして日本に流入し,そして今の形に定まっていったかを,俗説を交えつつ,資料の裏付けをもってそのルーツにたどり着こうと挑んでいる。
 たとえば「クリームシチュー」の項目を見てみると,著者はまずシチューの歴史から紐解こうとするが,しかし資料がほとんどないことで早々に行き詰まる。そこで,料理を食材にまで巻き戻し,牛乳の普及の視点から到達を試みる。さらに世界の類似料理へと目を向け,最終的に日本独自の料理ではないかという結論に至っている。では,日本でクリームシチューが広まった理由は…一つの答えが次の疑問へとつながり,真相へと迫っていく。
 巻末には11ページにわたる<参考文献>が列記されている。源流にたどり着こうと奮闘する著者の姿勢に,執念すら感じてしまうのは私だけだろうか。感服せずにはいられない。同時に,日々少しずつ変化していく庶民文化を記録しておくことの大切さと難しさにも気付かされる。
 食そのものの魅力もさることながら,取り入れたものを独自に消化し,アレンジを加えて発展させるという日本人の発想力のすばらしさを,改めて感じられる1冊である。
 ところで,表題にある「メロンパン」だが,実は形も内容もまったく違う2種類のパンが存在することをご存知だろうか。その謎と正体についてもこの本で明らかにされているので,ぜひご自身の目で確かめていただきたい。