ふわとろ SIZZLE WORD「おいしい」言葉の使い方
著 者:B・M・FTことばラボ編
出版社:B・M・FT出版部
ISBN13:978-4990489557

ふわとろ

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

今井つかさ / 厚木市立中央図書館
週刊読書人2020年4月3日号(3334号)


 あなたはどんな食べ物が好きだろうか? ふんわり? とろーり? なめらか? パリパリ? もちもち? おいしいというのは人それぞれ。それを隅々まで言葉にしたことがあるだろうか? この本は食べたくなる,思わずそそられる描写「シズル」の探求本。そもそも私たちは「おいしい」をどうやって感じているのだろう? 主に味覚と目でとらえる視覚,その後,香ばしい香りの嗅覚や食感の触覚そして聴覚が続く気がする。食べるということは生まれながらに備わっている行為で何気なくて自然だ。これからお米を食べるぞ。全身で味を感じるぞと構える行為ではない。
 しかし「おいしい」をつくるプロ目線で考えたらそれはガラリと変わる。本書に登場するプロの方々は食べる人が「おいしい」と感じるよう秒単位,ミリ単位,グラム単位で調整を行う。きっちり数値に落とし込む。経験値で仕上がりをそろえる。プロの研鑽があってこそ洗練された味が生まれることが改めてわかる。
 「おいしい」言葉を考えるという章では6名の専門家の分析が繰り広げられる。キャッチーな雰囲気のこの本で論文調の考察が読めるとは。参考文献が豊富に載っているのも嬉しい。気になるポイントから世界を広げることができるのだ。
 また別の章では「おいしい」目線の映画と本の世界の考察。食べ物起点で見たくなる映画や読みたくなる本にきっと出会える。最後にはシズルワードの字引き。これほど多角的に「おいしい」が詰まっている本がかつてあったであろうか? この本が生まれたのは筆者がマーケティングリサーチ会社を経営しているからこそであろう。15人が語り,5人が書いて,10人で作った本である。まさに「おいしい」がバラエティに富んでいる。あなたも「おいしい」言葉の世界にでかけてみてはいかがだろうか?