100歳の美しい脳
著 者:デヴィッド・スノウドン
出版社:DHC
ISBN13:978-4887243651

100歳の美しい脳

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

大石美和子 / 秋田市立新屋図書館
週刊読書人2020年4月17日号(3336号)


 国際アルツハイマー病協会は「世界アルツハイマー病レポート2015」の中で,2050年には2015年発表当時の3倍,1億3150万人が認知症になると予測している。
 認知症の研究は世界中で行われており,中でも,1986年から始まり現在も進行中の「ナン・スタディ」はとても興味深い。ナンとは修道女を意味する英語で,同じ食事をし,同じ活動をして,共に起き,共に寝る,規則正しい生活を繰り返す修道女678名を対象に,加齢とアルツハイマー病について調べ続けているのである。参加者は75歳から106歳までで,定期的に身体能力と精神能力の詳しい検査を受ける。そして亡くなったあとには脳を取り出して解剖することにも同意している。つまり,修道女たちの献身的な協力によってはじめて為し得る研究なのだ。
 かつてないこの長期にわたる研究で,これまでの通説の数々がどう変わるのか(もしくは変わらないのか),認知症に大きく関与する遺伝子を保有し,脳に変化が表れても,認知機能が衰えない人,その違いは何かが明らかになってくるだろう。
 人は誰しも,ただただ長生きがしたいわけではない。本を読み,旅行へ行き,考え,表現し,食事も排泄も人の手を借りずに行い,大切な人たちと離れることなく生きていきたい。生きることに純粋で前向きな修道女たちの人生がヒントを与えてくれるかもしれない。ナン・スタディを行う研究者によるこの本は,認知症の家族の在宅介護を経験し,自分も病気をした私に,ふとしたとき,健やかに老いることの意味を考えさせてくれる。
 ナン・スタディのモットーは「最後まで人生を生きられますように」(p.19)。そこには,科学的な研究ではあるが,数値では表せない想いが影響していることは間違いない。