アニメ聖地巡礼の観光社会学
著 者:岡本健
出版社:法律文化社
ISBN13:978-4589039576

アニメ聖地巡礼の観光社会学

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

藤巻幸子 / 所沢市立所沢図書館
週刊読書人2020年4月24日号(3337号)


 「聖地巡礼」に興味がある。この「聖地巡礼」に宗教的な意味はなく,自分の好きな音楽や映画,アニメなどにゆかりのある地を訪れることを意味する。現地のお店に入り,美味しいものを食べたり,記念になりそうなものを購入したりすることも楽しみ方のひとつである。
 何年か前から,「聖地巡礼」という単語をメディアで見聞きするようになった。本書を手に取った理由は,単純に自分と同じような行動を取る人々がどのように分析されているのかに興味を持ったからである。これまでも,観光における現象のひとつとしてアニメ聖地巡礼を取り扱った文献はあったが,研究対象として真正面から取り組んだものは珍しい。
 本書では,聖地巡礼者はどのような人物で,どういった行動を取るかを新聞や雑誌の記事から探り出している。また,同じような行動を取ると思われる大河ドラマ観光と比較している。そこから浮かび上がる聖地巡礼者の人物像は,意外なほど能動的で,現地とのコミュニケーションを大事にしている印象である。実際に現地を訪れてのフィールドワークでは,聖地巡礼者とそれを受け入れる地域の人々のありようを垣間見ることができる。アニメファンと現地の人が,お互いの価値観を認め合いながらコンテンツツーリズムを盛り上げている。
 本書は,2010年頃に調査を行ったものをまとめており,今読むと少し昔の現象という感は否めない。著者も「2018年5月現在のアニメ聖地巡礼と,10年前の聖地巡礼は,大枠の行動としては同じでも,細部や置かれた社会的状況がかなり変化しています」と,あとがきに記している。2010年以後はどうであったのか,この先「聖地巡礼」はどうなっていくのか。今後の研究結果に期待している。