出会い系サイトで70人と実際に 会ってその人に合いそうな本を すすめまくった1年
著 者:花田菜々子
出版社:河出書房新社
ISBN13:978-4309026725

出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

山成亜樹 / 神奈川県立図書館
週刊読書人2020年5月8日号(3338号)


 学校図書館に勤務していた頃,先生や生徒から「何か,おすすめの本はありませんか。」と尋ねられることがよくあった。どのような本を読みたいと思っているのか,これまでに読んだ本の中で,気に入った作者や作品はあるのか…雑談を交えながら書棚を歩き回り,おすすめの本を探していくことは,難しさを感じつつも,幸せなひとときであった。その後,新聞の書評欄で本書の紹介記事を目にし,インパクトの強いタイトルに惹かれ,ぐいぐいと引き込まれるように読み進めた。
 本書は,本と雑貨を扱う書店の店長(当時)である筆者が,「もっと知らない世界を知りたい。」という思いから,「X(エックス)」というサイトの存在を知り,そこでの体験談が綴られている。「X」は,知らない人と30分間だけ会って話してみる,というサイトだが,男女の恋愛に限定していないため,いわば「X」という名の共同体の中で,気の合う仲間を見つけることができる仕組みになっているという。
 筆者は30分という短い時間の中で,相手の魅力を見いだすと同時に,個性や好みも考慮して本を紹介していく。初対面の相手にもかかわらず,複数の本を紹介する筆者の力量には,脱帽するばかりだ。相手の気持ちに寄り添う本,人生の支えになるような本を紹介したいという筆者の一途な思いが行間から伝わり,私自身はこれまで,筆者ほどの情熱を持って本を紹介できただろうかと,自問せずにはいられなかった。
 本を通して交流を深めること,それは,「受賞作」や「ベストセラー」といった「肩書」だけでは表現し尽くせない魅力を,自身の肉声で語った時にはじめて実現できることだと思う。筆者の熱いメッセージを胸に,私も自分の言葉で,本の魅力を多くの人と分かち合えるようになりたい…そのような思いにかられた1冊である。