フォッサマグナ 日本列島を分断する巨大地溝の正体
著 者:藤岡換太郎
出版社:講談社
ISBN13:978-4-06-512871-8

フォッサマグナ

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

星野盾 / 沼田市教育委員会、日本図書館協会認定司書第2026号
週刊読書人2020年5月8日号(3338号)


 東日本大震災以降,日本は地震や噴火の活動期に入ったといわれる。今後は自分の命を守るため,地質や地形,気象の知識が必要とされる。そこで地質学の入門書として本書を紹介したい。
 日本列島最大の島,本州が中央で折れ曲がったまさにその場所がフォッサマグナである。フォッサマグナは,地底6,000m,地上2,000mを超える火山砕屑物などの堆積物で埋まった世界的に希有な溝である。およそ日本全人口の3割近くが,この溝の中で暮らす。フォッサマグナ西端は,急峻な山脈である日本アルプス沿いの糸魚川-静岡構造線であることが分かっている。
 フォッサマグナ西側は,北から飛騨帯,飛騨外縁帯,舞鶴帯,超丹波帯,美濃帯(丹波帯),領家帯と呼ばれる岩石の帯が連なる。関東平野北東部にも,飛騨外縁帯に対応する谷川帯,舞鶴帯に対応する片品帯,美濃帯に対応する足尾帯,領家帯がある。近年,超丹波帯に対応する放散虫の化石を含む岩が群馬県北東部で見つかったことにより,フォッサマグナを挟む東西の対応が判明した。
 30年以上前,フォッサマグナ東端は不明だと高校地学で習った。私はその答えを知りたくて,本書を手にした。しかし,フォッサマグナ東端が柏崎-千葉構造線なのか,あるいは利根川構造線なのか,それともさらに西にある断層なのか,残念ながらその答えは本書にも書かれてはいない。
 一本の学術論文は,通常ひとつの学説しか示さない。人は無意識に明確な結論を求め,たとえそれが嘘であっても,たまたま始めに読んだ論文を信じたくなるものである。本書は,謎は謎のまま,研究の歴史を丁寧に追い,複数の学説に著者の意見を加えながら,大胆にフォッサマグナ誕生の謎に迫る。一般的科学読み物であるが故の魅力を堪能できる一冊である。