命を守る水害読本
著 者:命を守る水害読本編集委員会
出版社:毎日新聞出版
ISBN13:978-4620324524

命を守る水害読本

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

加藤孔敬 / 名取市図書館
週刊読書人2020年5月22日号(3340号)


 2018年は大雪,地震,台風や梅雨前線等による風水害等が多発した。激甚化する災害。本書は水害を中心に,イラスト,図版などを多用し,分かりやすく紹介。章立ても,「水害レポート」をはじめ,「気象の基礎知識」,「豪雨に備える」,「はじめての避難」,「減災への取り組み」と,誰もが共通にイメージしやすい構成となっている。
 本書の注目すべき点は,命を守るための「事前避難」と被災者のその後の生活を守るための「事後避難」に分類し,説明されているところにある(p.127-131)。災害には2種類(地震など突然発生する「突発型災害」,水害などの「進行型災害」)あり,この2種類には大きく異なる「避難」の意味とタイミングがあるとしている。「避難」というと,災害の種類に関係なく,被災したら避難所に向かうイメージがあったのではないだろうか。これは,地震などの「突発型災害」における「事後避難」のパターンである。台風等豪雨を伴う気象災害では,降雨,河川への流出,流下,氾濫と順に発生するのが「進行型災害」の特徴である。本書では被害の発生までの猶予時間を使い「事前」に「避難」をする有効性があることを説いている。この事前避難の実践は,ニューヨークに甚大な被害をもたらしたハリケーン・サンディ(2012年)で実証された。これがタイムラインの原型(ハリケーン対応計画付属書)となり,この考え方が,わが国に導入されて「水害に備えたタイムライン防災」(p.150)がはじまったのである。
 最後に,タイムラインは図書館現場でも大いに活かせると考える。ハザードマップで予め館周辺の浸水状況を把握する。空振りを恐れない勇気ある行動。そして,発災までの猶予時間を使い貴重資料などを一時的に退避し,災害をやり過ごす行動。これらは,大規模災害への有効な手段になるはずである。

※本書第Ⅲ章 Part4に掲載されている「3.避難についての情報」(p.109)は現在,警戒レベルを用いた避難情報発令等の運用に変更となっています。詳しくは「避難勧告に関するガイドラインの改定」(内閣府ウェブサイト「防災情報のページ」)をご確認ください。