配色アイデア手帖
著 者:桜井輝子
出版社:SBクリエイティブ
ISBN13:978-4-7973-9324-8

配色アイデア手帖

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

玉井敦 / 埼玉県立松伏高等学校
週刊読書人2020年5月22日号(3340号)


 仕事柄,よくちょっとしたチラシやポスターを自分で作る。いかにも「ワードでござい」という出来にならないよう,格好の良いフォントを選び,構図を考え,各種素材を上手く配置するのだが,どうしてもあと一歩,あか抜けない感じがする。色使いがダサいのだ。
 下描きの段階ではそれほど悪くなかった絵が,絵具を載せた途端に台無しになってしまった経験はないだろうか。あれは形よりも色を整えるほうが難しいということを示している。配色は素人のデザインにおける鬼門なのだ。
 そこで紹介したいのが本書である。本書はいわゆる配色見本で,1テーマにつき9色を紹介している。紹介した色はすべてCMYK,RGB,カラーコードが記載されており,パソコン上で再現が可能だ。テーマは全部で127項目あり,3,175例(1テーマあたり25パターン)というサンプルの豊富さが特徴である。
 2色配色,3色配色などのシンプルな配色例のほかに,デザイン・パターン・イラストといった具体例も掲載しており,しかもほとんど使い回しがない。配色見本というと,イメージ写真が1枚と,同じTシャツの色だけ変えたようなサンプル数枚,といった本をよく見るが,一般的に素人は,色だけ並べられても使い道を想像できるものではない。本書はまさに素人向けの内容である。
 作業の邪魔にならない横長の本体形状や,すべてのテーマが見開き2ページで完結するページ構成など,読者の利便性を高める工夫が随所に見られ,非常に作りこまれた印象を受けた。
 何か深いことを考えさせるような本ではないが,読者の頭を働かせる点については同じかそれ以上であって,しかも実際に自作物のデザインが洗練されるという功徳がある。職場の本棚にも,自宅の本棚にも,1冊あって損はない本である。