パクリの技法
著 者:藤本貴之
出版社:オーム社
ISBN13:978-4274223389

パクリの技法

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

沖田香織 / 神奈川県立川崎図書館
週刊読書人2020年6月19日号(3344号)


 「世界初のパクリの教科書」であるという本書,表紙とタイトルからは図書館で選書するのがためらわれるかもしれない。実は科研費の助成を受けた研究成果の一部であり,パクリについて身近な題材で興味深く学べる内容となっている。
 パクリと聞くと近頃社会を騒がせたさまざまな問題が思い出される。しかし「パクリ」イコール悪,ではなく,多義的な意味を持った言葉であると著者は繰り返し述べる。パクリの技術が未熟で杜撰であることから問題が起こるのであって,正しい知識と技術をもったパクリはクリエイティビリティを高めてくれる。行き過ぎた自主規制で表現の幅を狭めてしまうことなく,多くの情報から正しくパクって,よりよいオリジナルコンテンツを生み出そう,という趣旨だ。
 パクリの歴史を繙いた章では,ギリシャ神話や聖書に始まりあらゆるコンテンツにオリジナルが存在し,それがまたパクられて派生していく様子を「人類の歴史はパクリの歴史」(p.52),と示す。
 「パクリの技法」の中でも文章のパクリは気になるところである。まずは引用や転載について出典を明示して正しく行うことを絶対ルールとして挙げ,さらに正しい「孫引き」を指南する。既存のニュース記事を元に,まるでオリジナルのような「エセ一次記事」(p.117)を,パクリとばれないようにどう作っていくか,そのテクニックにも感心させられる。
 後半では著作物にあたるか,判断に迷うケースを挙げて著作権をおさらいし,2019年1月に施行された改正著作権法についても解説。人工知能(AI)とパクリ,「自炊」などの問題も採り上げる。
 さてこれ以上下手な書評を続けて,引用の範囲を超えた未熟なパクリだとお叱りをうける前に筆を置くことにしよう。