こっそりごっそりまちをかえよう。
著 者:三浦丈典
出版社:彰国社
ISBN13:978-4395029655

こっそりごっそりまちをかえよう。

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

髙橋将人 / 南相馬市立中央図書館
週刊読書人2020年7月10日号(3347号)


 「じぶんのいえにあだ名をつけよう。」,「道路に面していない古いいえを見つけ出して秘密基地と名づけよう。」,「照明デザイナーと電気の消し方を相談しよう。」…目次に並ぶこんなワクワクするテーマは,読み手の想像力,いや,妄想力を試しているかのようだ。幼稚な夢物語を語っても現実には何の役にも立たない,などという凝り固まったオトナの考えを持つ読者なら,本書を放り捨てるか,もしくは読んでいて恥ずかしくなるかのどちらかではないだろうか。
 建築家である著者が,現代社会,とりわけ,“まちづくり”に感じる違和感を,平易な言葉で語る本書。学生であれ,為政者であれ,はたまた日々の生活を営む市民であれ,思考の時間を味わわせてくれる一冊である。とはいえ,主張にはきちんとデータの裏付けと分析があり,読者の妄想は,本文を読むことで,きちんと現実に着地することができる。冒頭で紹介したテーマを例にとると,「じぶんのいえにあだ名をつけよう。」の章では,無関心への警告と観察することの意義。「道路に面していない古いいえを見つけ出して秘密基地と名づけよう。」の章では,建築基準法で規定される接道義務への疑問。「照明デザイナーと電気の消し方を相談しよう。」の章では,日本文化を踏まえた“暗さ”の価値への意識が仄めかされ,理想へのロードマップを自ずと考えさせられてしまうつくりになっている。
 図書館とまちづくりの関連性が全国あちこちから聞こえてくる昨今であるが,“まちづくり”の言葉が内包する価値は広く,図書館としての視点,商業としての視点,都市計画の視点,生活としての視点…と,さらに他分野の視点からみることで違ったメリット・デメリットが浮かび上がる。想像力や理想を追う意思がなければ,“まちづくり”は無味乾燥なものになってしまうかもしれないと,本書の平易な言葉に危機感をあおられる。