ロビー・ロバートソン自伝
著 者:ロビー・ロバートソン
出版社: Du Books発行/ディスクユニオン発売
ISBN13:978-4866470535

ロビー・ロバートソン自伝

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

大林正智 / 豊橋市まちなか図書館開館準備室
週刊読書人2020年7月10日号(3347号)


 ザ・バンドとは1960年代から70年代にかけてアメリカで活動したロックバンドで,ボブ・ディランのバックバンドを務めたことでも知られている。そのバンドで作詞作曲の中心となり,ギタリストであったロビー・ロバートソンは,後年ファンからの評価を下げることとなる。再結成にひとりだけ参加しなかったこともあるが,バンドのメンバーであったリヴォン・ヘルムの自伝『ザ・バンド 軌跡』(ステファン・デイヴィス補筆,菅野彰子訳 音楽之友社 1994)で酷評されたことも大きな理由のひとつであろう。メンバーの追悼式に来なかったこと,印税を不当に我が物にしたことなど,かなり悪しざまに描かれている。
 そのロビー・ロバートソンが自伝を出す,そのタイトル(原題)が「TESTIMONY」(証言)であることを知って,これは四半世紀越しの反撃なのか,と心が騒ぐ。
 ふたりの言い分は食い違う。例えば名曲<ライフ・イズ・ア・カーニバル>についてリヴォンは「ぼくとリック(・ダンコ,ベース・ボーカル)が音楽をつくり,ロビーがそれに歌詞をつけた」と言っているが,ロビーは「ぼくは仕上げの途中だった新曲<カーニバル>をふたりに聞かせた」「この曲では結局リックとリヴォンのふたりと作曲のクレジットを分け合うことになって,ぼくはそれがたまらなくうれしかった」と振り返る。どちらも真実なのだろう,と思わせる説得力が双方にある。
 その他,解散に至る経緯や,薬物への耽溺についてお互いを責めるところもある。それでも読後に重い気持ちにならないのは,結局のところ,そこにあったのは友情であり,音楽を通じた絆だったのだ,と感じさせるリアリティがこの物語に備わっているからだろう。「証言」とはどちらが悪かったのかを裁く法廷でのそれではなく,友情が確かに存在したことへの「証言」だったのだ。