コスモス いくつもの世界
著 者:アン・ドルーヤン
出版社:日経ナショナルジオグラフィック社
ISBN13:978-4-86313-483-6

星海に馳せる、人類の飽くなき探求の心と

未だ見ぬ隣人へのメッセージ

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

津崎陽子 / TRC データ部
週刊読書人2020年7月24日号(3349号)


誰しも一度は想像したことがあると思う。暗闇に浮かぶ星々を見上げて、無数に輝く光の中で生命が存在する星はこの地球のみであるはずがない、どこかに私たちと同じように、文明を築いた知的生命体が存在するはずだと。宇宙という広大なスケールの中では人類の歴史はとてもちっぽけだ。
 
宇宙の誕生から現在までを一年の縮図で表した宇宙カレンダーになぞらえると、地球上に現生人類がようやく出現したのは12月31日23時56分頃(10万年前)だ。以来人類は、まるで地球上で頂点に君臨する生命かのごとく振る舞ってきた。我々の愚行は枚挙に暇がない。しかし一方で私たちが獲得した科学は暗闇を照らす光そのものだった。とりわけ宇宙に関する事柄は、フィクションを簡単に凌駕してしまう刺激的な現実に満ち溢れている。時代が違えば決して辿り着けなかった真実を、日進月歩で我々はこの数十年の間に発見している。本書は40年前に刊行された天文学者カール・セーガンによる著作「COSMOS」の続編で、伴侶であり共著多数の同志アン・ドルーヤンによって著された。扱う内容は宇宙のみならず、自然界のネットワークや、人類の科学の歴史と未来など多岐に渡る。美しく神秘的な銀河やダイナミックに迫り来る惑星、古代の叡智を示す遺物や17世紀当時の太陽系の図等ビジュアルも豊富で、たとえこの分野に馴染みがなくとも、興味を引く項から読み進めると知的好奇心に駆り立てられる。
 
私たちが眺める星々の光は地球へ届くにはあまりに遠く、遥か昔すでに滅び、いまは存在しないかもしれない。幼い頃その事実を天体図鑑で知ったときは衝撃を受けた。我々はこの星の大海でなんと孤独なことか。地球から最も近い火星の荒涼とした地も、数千万年も昔に栄えた生命が遠い銀河の外へ立ち去った抜け殻なのだろうか。本書によると、微生物付着等により生命起源の理解に影響を及ぼさないようにするため、NASAは天体探索時の保全方針から5つのカテゴリーを設定した。生命の気配が全くなく、起源解明に直接関わらないため、探査に制限のないカテゴリー1や、生命が生まれている可能性があり、最上の注意が必要なカテゴリー5等だ。太陽系でこのカテゴリー5に指定される天体は火星を含めたったの3つである。
 
138億年前、物質とエネルギー、時間と空間が突如出現して、私たちの宇宙は始まった。そして太陽も含めて全ての星はいつかその寿命を終える日が必ず来る。生命を照らし育む太陽の光熱が失われる前に、人類は果たして宇宙へ飛び出し、ほかの星へ旅立つことはできるのだろうか。10億年後という途方もない未来の図は想像も及ばないが、それでも著者や亡きセーガンは語る、真実を追い求めることに意味があるのだと。真実を探求し続け、やがて訪れる未来への展望は決して悲観的なものではなく、連綿と受け継がれていく科学という人類の偉大な共同作業が生命を紡いでいくだろうと信じたい。