白い人・黄色い人
著 者:遠藤周作
出版社:新潮社
ISBN13:978-4-10-112301-1

白い人

第33回芥川賞受賞作品

書評アイドル 渡辺小春が読む芥川賞

渡辺小春 / 書評アイドル


今回は、第33回芥川賞を受賞した、遠藤周作の「白い人」(初出『近代文學』1955年5月号)。
 
皆さんもきっと遠藤周作という名前を聞いたことがあると思う。主な代表作は、「沈黙」「海と毒薬」。「沈黙」は近年アカデミー賞監督によって、映画化もされた。キリスト教をテーマとした作風や、エッセイ、作家活動以外にも活動を広げ、歴史の教科書にも登場するような、日本を代表する小説家の一人だ。しかし、私は、この「白い人」という作品を、芥川賞をとっているのにもかかわらず知らなかった。そこから興味を待ち、この作品を選ぶことにした。あらすじはこうだ。
 
ヒトラー率いるナチ党によるファシズムがドイツで台頭していた第二次世界大戦の頃。キリスト学校に通うフランス人の主人公は、ある日父と訪れたアラビア半島の港町・アデンで目にした女の子が男の子を踏みつぶすような被虐的な曲芸を見たことによって、悪の心が芽生える。目つきが“すがめ”だった主人公は父に「お前は一生、娘にもてないよ、全く」と言われてしまう。このことがコンプレックスとなり、悪徳な行動は加速していく。やがて、母と父の死をきっかけに自由となった主人公は、ナチスにも興味を持ち、当時フランスのリヨンを占領していたドイツ軍の秘密警察となる。そこにある日、昔の友達が彼の前に狩りだされた。繰り返される虐待、拷問の日々。どんな苦痛にも神のために耐えるその友達の姿は悲痛なものだった。悪魔の心を持った青年の悲しい物語だ。
 
あらすじを見ての通り、主人公は家族、友達、祖国を裏切った。本人もそのことを自覚しているが、後悔とか、悲しみという感情がなかった。確かに悪魔ともいえるのだろう。しかし、友達が苦痛に耐えかね、キリスト教の教えに反する自殺をしたそのとき、彼は愛に裏切られる喪失感と腹ただしさを抱いた。「俺を破壊しない限り、お前の死は意味がない。」とつぶやくのだ。これは彼の善の心、悲しみの叫びなのだろうか。それとも、友達とキリスト教、どれを裏切るのかという選択に自殺の形で逃れたことに対する怒りなのか。
 
歴史の授業で第2次世界大戦の勉強をしている。主にドイツ軍がその周辺のフランス、ポーランドなどヨーロッパ諸国の占領の拡大をし、連合国軍と行なった戦争だ。ナチ党のヒトラーが、ユダヤ人迫害をして、多くの死者が出たことでも有名だ。主人公の境遇は、母がドイツ人で反ドイツのレジスタンス。父はフランス人。住んでいる場所は、フランスのリヨン市。と、複雑な環境に置かれていた。それも悪魔の心を持った理由の一つかもしれない。
 
私たち人間には、だれでも悪の心があり、善の心があるのだと思う。私の大好きな映画「スターウォーズ」のダースベーダーも、大切な人の死をきっかけに、善から悪へと転落した。身の回りのことでいえば、電車やバスでお年寄りがいると、席を譲らないといけないとも思うし、見て見ぬふりをしようとも思う。見て見ぬふりをした場合、やっぱり悪いことしたなって思うのは善の心でもあると思う。何が悪で何が善なのか? あぁもう頭がいっぱいいっぱいだ。この作品は深く考えられすぎて困ってしまう。

★渡辺小春(わたなべこはる)=書評アイドル
五歳より芸能活動を始める。二〇一六年アイドル活動を始め、二〇一八年地下アイドルKAJU%pe titapetitを結成。現在「読書人web」で『書評アイドル 渡辺小春が読む芥川賞』連載中。最近の活動として、官公学生服のカンコー委員会、放送中のNHKラジオ第2高校講座「現代文」には生徒役として出演中。二〇〇四年生。
Twitter:@koha_kohha_