蛇にピアス
著 者:金原ひとみ
出版社:集英社
ISBN13:978-4-08-746048-3

蛇にピアス

第130回芥川賞受賞作品

書評アイドル 渡辺小春が読む芥川賞

渡辺小春 / 書評アイドル


異世界の主人公に共感する自分

今回は、第130回芥川賞を受賞した金原ひとみさんの『蛇にピアス』(2004年集英社より刊行)を選んだ。
 
『蹴りたい背中』と同時期に賞をとり、作者の年齢も互いに若く、話題となっていた。

この作品は映画化されている。主演女優の体当たりな演技が評判になっていたので、かなり危ない作品だと思っていたが、本を読んでみて、ある意味想像通りだった。

主人公ルイの彼アマは、真っ赤な太いモヒカンの様な髪に、左眉に三本、下唇にも三本のピアス、背中には龍の刺青を入れている。ルイは彼の〝スプリットタン〟に魅力を感じ、アマの行きつけのお店の彫り師シバの元へ舌ピアスを開けに行く。SMの世界のような店に次第に惹かれてゆき、刺青を入れたりして「身体改造」にはまっていくルイ。また、シバへの愛も生まれ始める。見た目はパンクだけど中身はのほほんとしているアマ、クールで優しいシバ、無気力なギャルの主人公ルイ。三人の個性的な登場人物が脳裏に焼き付いてしまう。強い痛み、愛、孤独が感じられる物語だった。

〝スプリットタン〟とは、蛇のように二つに割れている舌のことで、想像するだけで痛い……。何故ルイはピアスや身体改造(刺青)に魅せられたのだろうか。
私にとって、ピアスや刺青は体を傷つけるものであるから怖いし、魅力を感じない。周りの友達には興味を持つ子もいるかもしれないし、実際ピアスを開けたいという子は多い。しかし、私の考えているファッションとは違ったピアスだらけの男、背中に龍の刺青といった知らない、知りたくもないような刺激的な世界がこの薄い本の中には詰まっていた。ドラマや小説でしか見たことのない世界は、ある意味私にとっては異世界でデンジャラスだった。危なくて、毒々しくて、ここにいる人たちは何だか見ていて辛い。

「普通に生活していれば、恐らく一生変わらないはずの物を、自ら進んで変えるという事。それは神に背いているとも、自我を信じているともとれる。私は何も気にせず何も咎めずに生きてきた。きっと、私の未来にも、刺青にも、スプリットタンにも、意味なんてない。」「私は他のどこかにいて、どこかから自分の姿を見ているような気がした。何も信じられない。何も感じられない。私が生きていることを実感できるのは、痛みを感じているときだけだ。」何故、痛い思いをしてまで「身体改造」をするのか、私は疑問に思っていた。ルイ自身、文中にもあるように「意味なんてない」と言っている。でも、無気力で、世界を俯瞰しているルイにとって、生きていることを実感できたのは身体改造による痛みでしかなかったのだ。何だか切ない。けれど、共感してしまう自分がいた。ルイの感情は、人を信じられなくなったとき、自分がしていることの意味が解らなくなってきたとき、生きている意味を探そうと考え込んで、ふと冷静に世の中と自分を俯瞰的に見てしまうときの孤独感、なんで今こんなことをしているのだろうと馬鹿らしく思えてしまうときの感情と似ている気がした。異世界の主人公とは分かり合えないんじゃないかと思っていたから自分でも驚いた。

生きていることを痛みでわかるというのは悲しいけれど、生きている実感が得られているルイが私は羨ましくも思える。私にとって生きがいとは何なのか。それをまだ探しているところと思う。きっと学生の私は、将来へとつながる道を開くために様々なことを学んで、吸収している時期なのだと思う、だから生きがいにたどり着くまで右往左往して迷いながら、苦労しながら歩いてゆくしかないのだろう。

読み終えて気になることがあった。この主人公達の10年後、20年後だ。ピアスの穴も、刺青も、もう二度と元には戻らない。一時的な快感で一生消えない穴。この話の続き、どういう世界に生きているのだろうか。より痛みを求めてしまってはいないだろうか。主人公たちの将来に不安を感じてしまう。この先、ハッピーエンドが待っていたら嬉しい。


<写真コメント:この春から高校二年生です!勉強に、委員会活動に、新しいクラスに、新しい仕事...。不安もありますが頑張ります!>

★渡辺小春(わたなべこはる)=書評アイドル
五歳より芸能活動を始める。二〇一六年アイドル活動を始め、二〇一八年地下アイドルKAJU%pe titapetitを結成。現在「読書人web」で『書評アイドル 渡辺小春が読む芥川賞』連載中。最近の活動として、官公学生服のカンコー委員会、放送中のNHKラジオ第2高校講座「現代文」には生徒役として出演中。二〇〇四年生。
Twitter:@koha_kohha_