純忠 日本で最初にキリシタンになった男
著 者:清涼院流水
出版社:WAVE出版
ISBN13:978-4-86621-119-0

日本初のキリシタン大名「大村純忠」
波乱の生涯をつづる

本の編集人より

/ WAVE出版編集部


『純忠』は、企画・編集にあたり、構想から刊行までに7年以上かかった、格別想いいれの深い本です。

この小説の主人公である、戦国時代の武将「大村純忠(すみただ)」のことを詳しく知ったのは、8年前のことです。子どもの頃、社会科の教科書に「キリシタン大名=大友宗麟、有馬晴信、大村純忠」と記述されていたことから、名前だけは知っていましたが…。

それを教えてくださったのは、昔の大村純忠の領地であり、現長崎県大村市の市長を6期勤められた「故松本崇市長」でした。

松本氏には『不屈魂』と『負けてたまるか』という、ご自身が現職市長時代、無実の罪で投獄され、妻、息子を失う悲しみ、脚の難病に苦しみながら。奇跡の再選を果たした物語の企画・編集・出版をさせていただいたことがご縁で、たちまち、わが人生の師匠のような存在になりました。

敬虔なクリスチャンだった松本氏は、郷里、大村が生んだ歴史上の傑物のことを独自に調べており、ある日、私に「純忠」の壮絶な人生を、以下のように語ってくれました。

信長より1歳早く生まれ、果てしない戦乱の日々のなかで30歳を迎えた大村の領主、純忠は、異教であるキリスト教の教えにごく自然に魅せられ、宣教師たちを厚遇。1563年には洗礼を受け、「日本初のキリシタン大名」となったこと。
 
「ドン・バルトロメウ」となった純忠が、領内に布教をすすめるために、領内の寺社を焼き払い、なんと領民およそ6万人ほとんどがキリシタンとなり、日本を代表するキリシタン王国を生んだこと。

そればかりか、国際貿易港・長崎を開港し、「天正遣欧少年使節」をローマに派遣して世界史に名を刻んだ純忠だが、その後の「禁教」のため、母国・日本では、その生涯はほとんど知られていないこと。

こんな話を聞いて、心が動かない編集者はおそらくいないと思います。

編集者というのは、毎日、身を削って、まだ見ぬ「宝さがし」をしているような生き物ですから。

早速、同じ時期に純忠の空前絶後の生涯に惹きつけられた作家、清涼院流水先生との「謎解き」のような本つくりの旅が始まりました。

しかし、あまりにも残された文献・資料が少ないため、純忠という人物が「天国を夢みた異端児なのか、戦国に現れた革命児なのか?」・・。純忠の純粋さ、信念と信仰に生き抜いた姿に惚れ惚れしながら、旅は難航を極めました。

しかし、最後には、「現代日本に一番欠けている、わが信念を貫き通す、純粋で本物のリーダーとはこういう人物ではないか」という確信を得て、2人で出版への山を登り切りました。

『純忠』は、こうした経緯を経た私にとっては運命的な本です。

「本は、読者の方々に喜びを与えるもの。出版社は、夢と希望を与える仕事だ」と、社を創業としてからの30年間、矜持としてきましたが、「本の喜び」は、著者はもとより、編集者にも、大きな喜びをもたらしてくれることを、改めてこの本で実感しました。

ともかく、こんな人物が、あの時代に本当にいたのか? と思わせるほど、興味深い編集作業でした。

7年もの茨の路を完歩された著者の清涼院先生に感謝するとともに、読者のみなさまと、「本の喜び」を共有させていただけましたら幸いです。