小学館 四字熟語を知る辞典
著 者:飯間浩明
出版社:小学館
ISBN13:978-4-09-504182-7

生きた用例で四字熟語を味わう楽しみ

本の編集人より

松中健一 / 小学館出版局 辞書編集


本書の編者・飯間浩明さんによると、「四字熟語」ということばが広まったのは戦後のことらしいのですが、四字熟語とはどういうものをさすのか、疑問に思われるかたも多いと思います。

飯間さんは本書で取り上げる四字熟語を「日常生活を送る上で、覚えておくといい四字の漢字熟語」というくくり方でとらえ、簡潔な文章を書いたり、文章を理解するために、これだけはということばを約1200語収録しました。
 
各項目は四字熟語の意味・用例・補足解説から構成されていますが、特に用例は、近現代の作品から、わかりやすい例文をたくさん載せています。これまで長く、用例採集を続けてこられた飯間さんによって多くのいい例文が取り入れられました。
 
たとえば、「消化不良」の「知識などをよく理解できないで、自分のものとして身につけられないこと」という比喩的な意味で使われた実例として、
 
◉そういうナマの政治用語は、大衆の公器などという錦の御旗をおしたてて、まんじゅうの皮のように毒にも薬にもならぬ、スカみたいなドラマを流すのにきゅうきゅうとしている放送界では、消化不良を起こすにきまってるのだ[田辺聖子*感傷旅行(センチメンタル・ジャーニー)|1964]

を入れましたが、わかりやすい例文だと思います。

また、「三者三様」の、

◉両親は自分たちのエゴを押しつけるだけで、子どものことがまったく見えていない。息子の方はそんな親たちに愛想をつかしている。三者三様に不信感を抱き合って、進学の話どころではない[片山恭一*九月の海で泳ぐには|2003]

のような例文でも、状況をピッタリ表すことばとしてこの四字熟語が選ばれていることがよくわかるのではないでしょうか。
  
さらに、この辞典では、飯間さんが特に注目してほしいことばとして選んだ100語については1ページの大項目として、ことばの背景や使い方などについて詳しく解説しています。
 
例えば、明治初めの流行歌「ジャンギリ頭をたたいてみれば、文明開化の音がする」の最初の文句に「半髪頭(=ちょんまげ)をたたいてみれば、因循姑息の音がする」とあり、「因循姑息」は「文明開化」と対になる当時の流行語だったことがわかります。また、「臥薪嘗胆」は漢籍に出典のある語ですが、日本で広く使われるようになったのは明治になってからのことだった、など、ほかにもいろいろな発見があると思います。