野球ノートに書いた甲子園Final
著 者:高校野球ドットコム編集部
出版社:幻冬舎
ISBN13:9784344033498

野球ノートに書いた甲子園 FINAL

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

山内裕美 / 福井県立足羽高等学校
週刊読書人2020年8月7日号(3351号)


 数年前野球部の生徒から「哲学の本だよ」と勧められたのが,シリーズ初巻となる『野球ノートに書いた甲子園』だ。この『FINAL』は6巻目で,大阪桐蔭,智辯和歌山,乙訓,智辯学園,横浜隼人高校が紹介されている。
 甲子園をめざして練習を続ける野球部の選手たちが野球に関する質問や悩みをノートに書くと,監督やコーチがアドバイスを書き込んでくれ,それを参考にして自分で欠点を克服していくという「戦いの記録」である。本校ではチームスポーツ部に所属する生徒を中心によく読まれているのだが,それにはもう一つの理由がある。
 学校では毎年目の当たりにすることだが,どんなに強いチームであっても時が来ると新チームを結成しなければならない。チームをまとめる使命を託されたキャプテンは,精神的に追い込まれても監督の期待に応えポジティブにふるまい続けなければならなくなる。このような選手共通の「心の戦いの記録」をあらわにし,これらについて考える機会を本書は生徒に与えてくれるのである。
 ただ自分のプレーを冷静に振り返って欠点を認め,不安を引っ張り出すことには痛みが伴う。またそれらをことばに表すことも容易ではない。それでは「『野球ノートは人に見せるもの』という意識があって,自分の気持ちをストレートに書くことができなかった」(p.141)と言っていた選手たちは,どのように気持ちを切り替え,ノートの内容が充実しだしたら野球がうまくなっていた(p.54)と胸を張れるようになっていったのだろうか。
 彼らの心と技術の両面の成長は活字からも十分伝わるが,写真で紹介される生徒の直筆ノートを1字ずつ追っていくと心の奥が垣間見えるようである。それは苦しくもあり貴くもある。そんな「野球ノート」をある監督は「武器」と呼び,ある選手は「相棒」と呼ぶ。果たして私たちにはどう映るのだろうか。