おうちでできるおおらか金継ぎ
著 者:堀道広
出版社:実業之日本社
ISBN13:978-4-408-33756-2

おうちでできるおおらか金継ぎ

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

内山香織 / 黒部市立図書館
週刊読書人2020年8月21日号(3353号)


 金継ぎとは,漆を使って欠けたり割れてしまった陶磁器を繕う伝統的な技法である。道具や材料を準備し,乾燥も含め日数をかけながら壊れた器を継ごうとするのは,なかなかの難易度高めなワークだ。しかしながら,金継ぎをやってみようとは人生において一度も思ったことなどなかったはずの私が,本書を読了するや,私にもできるかも? ぜひともやってみたい! と材料をひとそろえ衝動買いしそうになった。幸いにも(不幸にも)目の前に割れた陶磁器がなかったため,すんでのところで未遂に終わったのである。
 「誰でも」「おうちで」「手に入れやすい道具で」気楽に金継ぎを楽しんでもらえるようなやり方を紹介しているところがこの本のすぐれているところだ。本格的な漆を使った「もっとも伝統的なやり方」を踏まえたうえで,「もっとも体に害のないやり方」,「もっとも簡略化したやり方」,「もっともお金のかからない経済的なやり方」と四つも紹介できるのは,著者自らが金継ぎ教室を主宰し,日頃から初心者を教えているたまものであろう。
 難しくなりがちな技術的説明を補足するのが,ナビゲーターの可愛いリスたちである。ちょっとしたコツや,ミニ情報を挟んでくるのだが,漆と混ぜるものの固さを説明するのに「上品にいうと,ワンちゃんの落としものくらいの固さです。」と上品とは真逆の説明をしてみたり,「ほつれ」のページでは,「夫婦のきずなもほつれないようにしたいわネ」なんてお節介なコメントをしてみたり,リスたちの繰り出すゆるいコメントは読み逃せない。むしろ,本文よりリスたちに注目して読むことで何倍も楽しめる。普段はパラパラとたくさんの本に目を通すため,熟読したくてもできないという図書館員特有の職業病を抱えた私だが,この本は久しぶりに隅から隅まで快読したという満足感でいっぱいである。本書は,金継ぎという伝統技術を現代に「継ぐ」名著であるといえよう。