嫌なこと、全部やめても生きられる
著 者:プロ奢ラレヤー
出版社:扶桑社
ISBN13:978-4-594-08375-5

負けること♪投げ出すこと♪逃げ出すこと♪

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

小勝洋平 / 八千代市立勝田台図書館(指定管理者)
週刊読書人2020年9月4日号


 僕の月給は、手取り15万円です。社会人8年目のアラサー男子な僕が、もしもこんな事を言ったら、あなたはどう思うでしょうか? おそらく「すごいね、高級取りだね!」と言ってもてはやしてくれる方は(皮肉を別として)ほとんどいないと思います。しかし、本書の著者はさらりとこう言います。「自分で満足してるなら、別に手取り15万円でもよくね?」。

 この著者「プロ奢ラレヤー」とは一体どんな人物なのか。彼の職業は読んで字のごとく、奢られる〝プロ〟。簡単に言ってしまうと、他人のカネで毎日メシを食ってる人です。彼がいかにして、この夢(?)のような生活を手に入れたのか、その経緯については本書の「まえがき」に書かれているので、そちらに譲りましょう。

 本書は、そんな生活を送っている彼の人生観が語られた一冊です。例えば、〝お金〟について、彼は「お金のために嫌なことを我慢しても、結局儲からない」と主張します。どういうことかというと、世の中の多くの人はお金を稼ぐために、毎日満員電車に乗ったり、スーツにネクタイという息苦しい格好をしたり、合わない上司の命令に従ったり、嫌なことに耐えながら必死に仕事をしています。そうして溜まったストレスを解消するために、毎日のように呑みに行ったり、大量のお菓子を買い込んだり、ネットショッピングをしまくったり…ってアレ?せっかく大変な思いをして稼いだお金をストレス解消に注ぎ込んでしまっています。それであれば初めから、給料は高くなくても低ストレスな仕事をした方がよくない?というのが著者の考え方。この他にも、「『〇〇してくれる人』より、『〇〇しないでいてくれる人』を大事にした方がいい」とか、「『好きなことで、生きていく』より、『嫌いなことで、生きていかない』ほうが大事」といった具合に、本書では一貫して、いかにして嫌なことに関わらずに生きていくかが語られています。

 この本を読んでいると、10年前に総理大臣だった菅直人が提唱していた「最小不幸社会」という言葉が思い出されます。最小不幸社会とは、「政治の役割は、貧困や戦争など国民や世界の人が不幸になる要素をいかに少なくしていくかだ」という考えのもと、菅首相の就任会見でも使われたフレーズでしたが、当時は自民党の総務会長だった小池百合子に「否定形ではやる気が起きない。『最大幸福社会』を実現すべき」とバッサリ切り捨てられるなど、キャッチフレーズとしてはあまり人気が無かったように思います。しかし、本書で語られる人生観はまさに「最大幸福」ではなく「最小不幸」を目指すもの。やっと菅さんの考え方に時代が追いついた、というところでしょうか。

 さて、嫌いなものは全部やめてきた著者ですが、最後のページで衝撃のカミングアウトが。まさか、こんなことまでやめてしまったのか…。気になる方は、ぜひ本書を手に取ってください。