海の極小!いきもの図鑑 誰も知らない共生・寄生の不思議
著 者:星野修
出版社:築地書館
ISBN13:978-4-8067-1599-3

あなたの知らない(小さな)世界

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

船木園子 / TRC データ部
週刊読書人2020年9月4日号


 最近、めっきり海に行かなくなったので、「海」と言えばテレビで海岸に育つ生物をみるくらいになってしまった。この本は、タイトルに「図鑑」と入っているが、どこにいるのか、どんな生物と共生・寄生しているのかわかるように写真と説明文で紹介しているため、極小さい範囲だが「海」を感じさせてくれた。

 著者の星野修は、1993年に伊豆大島へ移住し、水中ガイドになったとのこと。前著書『海の寄生・共生生物図鑑』では、伊豆大島で見られる魚と寄生生物や共生生物、また特徴的な生態を持った生物たちを写真で紹介してくれた。今回は、もっと極小な生物の関係を「岩礁」と「砂地」にわけて紹介している。「はじめに」によると、著者はなにより、海を底辺でささえている極小生物たちを認識して欲しかったようだ。

 ところで、この本の良さは、まず、載せられている生物のその大きさ。例えば、海で1㎝四方、5㎝四方の世界が、12×19㎝ほどのページの中に広がっている。実際の海にいっても、慣れていなければ、ほぼ気が付くことのできない世界だろう。次に、綺麗さ。カラフルで美しく様々な形の生物を、綺麗な写真で載せている。サンゴの上のカンザシゴカイの仲間は、まるで2つのカラフルな傘のような鰓をもち、その色や模様も様々。コケムシの群体もまるで、花や苔の塊のような形をしている。ホウキムシ、ケヤリムシ、刺胞動物…。綺麗に見えるものは沢山ある。もちろん、一部の寄生生物は本来なら見たいと思えない姿のものもあるが、何故かこの本の写真だと面白いと思えてしまうから不思議だ。途中のコラムでは、水中撮影の仕方も紹介してくれている。

 この本は、普段見えていないところにもまた一つの世界があり、それが普段見えている世界をささえていること、見えているものが個体でなく群体であることもあること、他の生物と共生しあうこと等々を気づかせてくれる。また、植物的なフォルムに見えるものも多いので、動物と植物の境界は案外差がないように感じさせる。

 最後に、一見美しく見えるカンザシゴカイだが、「ゴカイ」といえばよく聞くのは「釣りの餌」。それとなんで違うのだろうと、「カンザシゴカイ」を検索してみると、実はあの綺麗なところは頭部の鰓冠だけで、その下には長い胴体が…。今まで見せられていた本に載っている綺麗なところは、正しいけどすべてではない。そんなところも含めて、知らない世界がさらに外に広がっていくことに気付くことができると思う。