装いの心理学 整え飾るこころと行動
著 者:鈴木公啓(編著)
出版社:北大路書房
ISBN13:978-4-7628-3103-4

私たちは今日何を着ているのか。
そして明日は?

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

髙田祐子 / TRCライブラリー・アカデミー
週刊読書人2020年9月25日号


 装いは歴史上途切れなく行われてきた。むかし人は紐や貝殻を身に付けたり顔料を直接皮膚に塗っていたといわれる。身体塗布された顔料そのものは後世に発見されていないが、皮膚を保護する目的であれば他の動物同様に泥を塗ればよく、意図があって顔料が使用されたのだろう。装いの性質は時代や文化・場面によって変化し、魅力的とされる意味合いも多種多様に変化し続けてきた。取捨選択をくりかえし、私たちはこの世に生をうけた日から装い続けている。

 本書では装いの種類から身体的・社会的・心理的機能について述べられ、スキンケアやメイクアップといった身体装飾、美容整形などの身体変工まで、外観の変化を広く装いと位置づけ17の章にわたり述べられている。著者はしぐさや言葉も他者の目に映る、装いのひとつに含めている。人は場面によってしぐさや言葉を使い分け、その人物の何かを周囲に感じ取らせており、どう受け取られるかをある程度予測したうえで調整していると説明する。姿勢や歩容も実際には当人の情動やパーソナリティとは関連しないといえるが、何かしらの印象は与えている。身体は装っているのだ。

 各章のテーマに関連する統計や調査の結果が数多くの図表で示され、読者の理解を助けている。各章はテーマにちなんだコラムで結ばれており、例えば「体型」の章では「ウエイトトレーニング実践者の心理」というコラムが添えられ、トレーニングの心身へのプラス面とともに行き過ぎたトレーニングは醜形恐怖症・身体醜形障害の一亜型であると説明されている。他にも「子どもの痩身志向への母親の影響」「マンガ・アニメにおける登場人物の衣装が果たす役割」や「首長族カヤンの女性の首輪飾り」等々、このコラムから装いにかかわる幅広いジャンルの情報を得ることができる。

 個人・対人・集団・社会・文化と着装行動の関係の研究は、服飾心理学と呼ばれ日本では1980年代になって関心が寄せられはじめた比較的新しい分野の学問である。

 着装行動は他者との関係、社会規範・集団規範といった心理的・社会的要因の影響を受け決定されている。今日どこへ行き、誰に会って何をするのか?天気は?そして気分は?と思いめぐらせ、日々の装いを選択する。着装者自身の心理特性が相手に伝わり、言語を介さない(非言語)コミュニケーションとして、人と人との間に装いを通じた相互作用が生まれている。

 さらに装いがもたらす心理的効用には、自他に対し肯定的な働きが生じ積極的な行動ができるようになるといった対自的機能と、他者から評価されるという対他的機能があげられる。とりわけ化粧については2000年代以降、病院や高齢者施設においてその効用が多数試されている。「癒し」「はげみ」が化粧の顕著な対自的機能とされ、効果のほどは化粧療法被験者の「笑顔」に表れているといえる。装いがもたらす多種多様の効用が、これからも私たちを助けるだろう。