ハウ・トゥー バカバカしくて役に立たない暮らしの科学
著 者:ランドール・マンロー
出版社:早川書房
ISBN13:978-4-15-209909-9

提示された方法をどう感じるかは自分次第?

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

老沼扶美子 / TRC仕入部
週刊読書人2020年10月9日号


「ホワット・イフ?」「ホワット・イズ・ディス?」の著者の最新作は「ハウ・トゥー」。今回は「ものすごく高くジャンプするには」「穴を掘るには」といった身近な議題に対して、考えうるだけの方法を(たとえ実現不可能だったとしても)考える、というもの。

 副題に「バカバカしくて~」と入っていることからも分かるが、その方法は時に「バカバカしい」と感じるほど荒唐無稽な内容であることも多い。

 例えば「ものすごく高くジャンプするには」では、当初は普通の棒高跳びだったはずが、いつしかグライダーのようなものを身にまとい、山からジャンプし、風に乗り……上手く棒高跳び会場まで降り立てば最高記録、ということになってしまう。

 そのほかのテーマでもほとんどが理論的には可能かもしれないが、おそらく失敗するのでは?もしくは現実には無理なのでは?という方法ばかりなのである。出来ているものもあるにはあるが、真剣に方法を知りたくて読み始めた人は激怒ものかもしれない。

 しかし、そんな心配は無用である。そもそも真剣に方法を知りたい人はこの本を手にしないから。この本を手にする人は私も含め、「バカバカしくて~」というフレーズが気になった人が主な読者だろう。原書タイトルからもそれは伺えるのできっと著者へのクレームも皆無と思われる。「面白すぎて困る!」などというクレームはあるかもしれないが。

 ただし、ここで語られる様々な科学的な「解決方法」は理解するのに少々難しいものも多い。生物・化学・物理・地学など、これまで学んできた理系の知識を総動員させる必要がある。

 だからと言ってそういった知識が絶対に必要かと言うと、そうでもない。行間に棒のような形で描かれた人々や図式でニュアンスをしっかりと伝えてくれるからだ。百聞は一見にしかず、という言葉をしみじみと感じられる。

 では逆に理系の知識がいらないかというと、さらにこの本を楽しく読めるエッセンスとなるので、やはりあればあった方がよい、といったところである。少なくとも1冊を読み終えた際の「いつもと違う部分の脳を使った気がする」という感覚が心地よい。

 時々「学校の授業で習うものは将来役に立たない」という声を聞くことがあるが、個人的にはそうは思っていない。人は無意識の間でその知識をどこかで応用し、役立てているからである。この書籍を読んだ際に感じた「これはどこかで聞いたような?」という感覚は、その裏付けとも言っていいのではないか、そう思った。

 そういった意味ではこの書籍は分かれば分かるほど楽しく読める書籍、という位置にある書籍である。楽しく読めなかったとしたら……この書籍の最後の章である第28章にはこの書籍を処分する方法まで書いてある。そこを参考にするとよいだろう。