新書アフリカ史 改訂新版
著 者:宮本正興,松田素二 編
出版社:講談社(講談社現代新書)
ISBN13:978-4-06-513948-6

新書アフリカ史 改訂新版

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

大塚敏高 / 元神奈川県立図書館
週刊読書人2020年9月18日号(3357号)


 アフリカは遠い。知らないことが多すぎる。とりあえず歴史だけでもと思って,アフリカ史の入門書を探してみた。歴史学の専門誌『史学雑誌』(史学会発行)では,毎年1回,学界の文献動向を特集している。その中に「アフリカ」が項目としてあげてあり,本書は,「…アフリカ研究を志す者の(最良の)入門書であり続けている…」(『史学雑誌』2019.5 p.312)という評価のもと紹介されていた。早速手にする。まず驚くのが,新書判で776ページという厚さである。通常の3冊分はある。1997年刊行の旧版に,改訂新版では,21世紀の現代アフリカ社会の動向と未来への展望が,180ページほど加わっている。

 「改訂新版にあたって」を読んでみた。「今からほんの50年前まで,欧米の歴史学界では,依然として『アフリカに歴史はない』という見方が強固に存在した。」(p.20)と書かれていることに驚く。そして「アフリカ史にアプローチするということは,これまで自分自身を支えてきた世界観を再考し再創造する営みでもある。」(p.21)と言い切っている。アフリカ史は知的挑戦なのだ。気軽に入門書を探していたことを反省したい。

 本書の内容は,一言では表現できない。ともかく全部で6部18章からなるとだけ伝えておこう。人類の誕生から現代のアフリカまで網羅され,幅広く,深く,そして面白い。初めて聞く地名・人名も多い。興味を覚えたところ,どこから読んでも差し支えないだろう。アフリカに,少しは近づけたと思わせてくれることは間違いない。

 18章「アフリカの未来」の中で,言語について述べているのが,普通の通史とは異なる点だ。旧宗主国の言語が公用語となっている国がほとんどだが,日常的に使っている言葉(母語)は「人間と社会の開発に役立つ可能性を秘めている」(p.691-693)。読後,いつまでも残る重い指摘だった。