もがいて、もがいて、古生物学者‼
著 者:木村由莉
出版社:ブックマン社
ISBN13:978-4-89308-931-1

もがいてみるのも、また一興

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

佐藤幸司 / TRC東日本支社
週刊読書人2020年11月6日号


 今回この本が気になったのは、単純に著者が同年代だったこと。同年代でこういう歩み方をしている人がいるというのは「凄い」のひと言である。

「夢を叶えるって、大変だ!」この本の帯にはそう書かれている。幼い頃に憧れた、興味を持った、好きになったことを職業にすることはとても魅力的なものだと考えられるが、なかなかそこに至るまでの過程に焦点が当たるものが少ないと感じる。この本ではその部分が描かれており、中でも私が一番気になったのは、突き詰めてまで目指したいものなのか、その情景を第三者の視点で見ていることが好きなのかの疑問や葛藤。その都度迷う視点が描かれていたことである。それこそ、タイトル通りなのである。その葛藤の部分については、この本を手に取って感じてもらいたい。

 一点集中している時には気が付かなかったいろいろな視野も、ふと立ち止まった時に広がることもある。歩き方を変えるのは勇気がいることだが、決して間違いじゃない。よく耳にする言葉だが、可能性はひとつではないということを改めて認識する。

 ところで、どうして勉強をするのか? という質問は、一度は目や耳にしたことがあるのではないだろうか。自分で考えたことがある人も多いかもしれない。解答はそれぞれになるかと思うが、この本の進路アドバイスの章がひとつの解答になりそうだと感じた。目指す未来がどの分野なのかによって変わる部分もあるが、スポーツでもデータ分析が必要なわけである。そのデータをどう読み解くのかは、やはり基礎学力は必要になるだろう。社会人になってから勉強しなくなったかというと、授業や講義がないだけで、勉強はし続けていると思っている。人と話すことや、こうやって本を読むこともひとつの勉強だ。小説を読むことだって、その文字の中からたくさんのことを学ぶことができる。そして、学び続けている人ほど、たくさんの歩き方を知っている。

 そんな話をして最後につなげたいと思うが、私が館長をしていた時、そして今の立場で常に思っている、伝えていることは、特化型でいいということ。いろいろなジャンルに興味を持つことも良いことだが、好きなジャンルに没頭することで世界が広がるなら、とても素晴らしいことだと思う。私たちが関わる図書館と施設は、そういう没頭できる世界に出会えるきっかけ作りを手伝えるものなのだから、働いているスタッフが特化型なら、より緻密にきっかけ作りができるはずだからである。あと、好きなものなら、多少もがいても楽しいと思える、はず。