都市で進化する生物たち
著 者:メノ・スヒルトハウゼン
出版社:草思社
ISBN13:978-4-7942-2459-0

生きものたちの都会の生活

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

大谷満奈美 / TRC人事部
週刊読書人2020年11月6日号


 自動車の通り道にクルミを落として殻を割るカラスがいるそうだ。もともとカラスは岩にクルミを落として割る習性があったのだが、都会生活の中でこの方法を思いついたらしい。自動車が低速になる交差点で、信号が変わるタイミングをみてクルミを落とし、中身を回収する。この行動は、海外研究者からも注目されているという。

 本書には、都市部に生息する動植物が環境に順応した進化をとげており、都市ならではの生物多様性が展開されている数々の研究が紹介されている。著者はオランダの進化生物学者、生態学者。図書中では自らを都市生態学者とも呼んでいる。来日して仙台市にも滞在したことがあり、前述のカラスのクルミ割りを観察したいと袋いっぱいのクルミを用意し、わくわくしながらチャンスをうかがったそうだ。ちなみに原著のタイトルは「Darwin comes to town」。ダーウィンが(町に)来た!なのだが、日本向けに書かれたものではないので、これが日本で出版されたのは運命的な出会いだったのだろう。訳者あとがきも熱かった。

 そもそも街中にいる生き物は、地球上のそこかしこで進む都市化の中、住処を奪われながら生きている…野山に暮らしたほうが幸せなのに…そんなイメージがあった。しかし、商店街、ビジネス街、公園、住宅街など一定の範囲の中でも変化に富んた土地は、生き物の目になって見れば木々や岩崖であったり湿地、川などと同様の環境だ。それぞれの環境には適応する生物がいて、そこに豊かな生物多様性が現れても不思議はないという。先祖が岩崖を住処にしていたハトやツバメにとって、都会の高い建物やその隙間は岩崖と同じく住みやすい場所なのである。さらに、交通量の多い場所に住むツバメは、走る自動車から素早く体をかわすために翼が短くなってきたり、野鳥やバッタの鳴き声が街の喧騒に負けないよう高音になっていくなど、これが一時的な適応ではなく、世代を重ねた遺伝子レベルの変化であることが確認されている。

 ビルが立ち並び自動車や鉄道が行き交う都会も、人間だけの住処ではない。生きものたちも堂々と暮らしを築いている。家の前の電線にキジバトのカップルが訪れるのを楽しみに見ていたが、後日、ハトには油断したらいけないことを知ってしまった。テリトリーの奪い合いとなれば呑気に構えてはいられない。彼らの方がヒトよりもうまく暮らしているのかもしれないのだから。