「見える」と「分かる」は別物だろうが、“Seeing is believing.(百聞は一見に如かず)”という表現は、隣の人は火星人だと忘れている節がある。それどころか、自分の目や脳に欺かれる可能性も、理解に視覚情報を必要としない人の存在も、どうやら念頭にないようだ。
このことわざも出てくる映画『グランド・イリュージョン』の原題は、マジシャンの常套句“Now You See Me.(見えていますね)”だ。通常、この言葉の後には、何らかのマジックが起きて“Now, you don’t.(はい、消えた)”と続く。ダニエルは「よく見えていると思うほど、だましやすくなる」「近づけば近づくほど、逆に見えなくなる」と言う。