内なる町から来た話
著 者:ショーン・タン
出版社:河出書房新社
ISBN13:978-4-309-20803-9

人間は動物よりも偉いのか

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

片山みどり / TRC仕入部
週刊読書人2020年12月11日号


 昨年、5年ぶりとなる最新絵本『セミ』を発売したショーン・タン。発売時期に合わせて日本で初めてとなる巡回展覧会を開催するなど(展覧会は2021年1月31日で終了)ここにきて人気が再燃している。ショーン・タンはオーストラリア生まれのイラストレーターであり絵本作家。また、映像作家としても高い評価を得ている。ショーン・タンを一躍有名にした文字のない本『アライバル』は数々の賞を受賞し、日本をはじめ多くの国で出版されている。そんなショーン・タンの最新作が今年、世界三大児童書賞である〈ケイト・グリーナウエイ賞〉を受賞した本作である。前作『セミ』でその独特の観察力と洞察力で世界中を驚かせたショーン・タンだが、本作でもまたその能力を遺憾なく発揮している。本作は2008年(日本では2011年発売)に発表した『遠い町から来た話』の姉妹編にあたる作品で、動物を題材にした25話が収められている。我が物顔で自然界を牛耳る人間は動物たちにはどのように見えているのか。動物から本音を聞き出すことは、おそらく、この先科学がどんなに進歩しようとも難しいことだからこそ、作中の中で描かれている動物の姿に真実味が増してくる。当たり前のことだが、自然界にいるのは人間だけではない。まして、動物と上手く共存できていると思っているのは人間の勝手な思い込みに過ぎない。タテ社会で生きる人間ならば自然界の先輩である動物の話に耳を傾ける必要があるのではないだろうか。