SF映画術
著 者:ジェームズ・キャメロン
出版社:DU BOOKS
ISBN13:978-4-86647-095-5

SF映画が照らし出す未来

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

豊田香絵 / TRCデータ部
週刊読書人2021年1月8日号


 一面の雪の中で、白くて足の長い不格好なロボットが激しい戦闘を繰り広げている。わたしの一番古い映画の記憶である。ストーリーは全く覚えていなかったので、それが「スター・ウォーズ 帝国の逆襲」の1シーンだと知ったのは後からだったが、考えてみるとそれがSF映画との最初の出会いだった。それ以来たくさんの映画を観てきたが、改めて振り返ってみると、後々まで心に残っているのはSF映画ばかり。そこで手に取ってみたのがこの『SF映画術』である。

 本書は、「スター・ウォーズ」のジョージ・ルーカスを始め、「E.T.」のスティーヴン・スピルバーグ、「ブレードランナー」のリドリー・スコットといった名監督に、あの「アバター」のジェームズ・キャメロンがインタビューするという、なんとも贅沢な一冊である。大御所の監督だけでなく、ブラックホールと五次元の世界を視覚的に描いた傑作「インターステラー」のクリストファー・ノーランや、巨大怪獣とロボットの戦いを描いた「パシフィック・リム」のギレルモ・デル・トロなども登場するあたり、SF映画好きにはたまらない人選となっている。

 対談では、SF映画につきものの「タイムトラベル」や「地球外生命体」「モンスター」といったテーマに沿って、それぞれの監督が自らの発想の源泉や撮影の裏話などを語り合う。対談以外にも、映画のスチールや宣伝用ポスター、ジェームズ・キャメロンが描いた絵コンテ(すごく絵がうまい!)などもあって、視覚的にも楽しませてくれる一冊である。

 意外だったのは、日本の「ゴジラ」に影響を受けた監督が非常に多いということ。日本では、初期の「ゴジラ」は特撮映画というジャンルであり、あまりSF映画という認識はされてこなかったように思うが、考えてみると確かにモンスター系のSF映画である。日本映画でSFといえばほぼアニメという印象が強かったので、「ゴジラ」がここまで浸透していたというのは嬉しい驚きだった。

 現在、SF映画は子どもから大人まで楽しめる、映画館でも人気のジャンルだが、その理由は、「ストーリーに意外性があるから」「映像に迫力があるから」ということだったように思う。現実味がないからこその面白さだと。しかし本書で登場した監督たちは異口同音に、SFはありえない現実、娯楽的な妄想などではなく、はるか遠い未来で、あるいは近い将来にも起こりうることなのだと語る。

 科学の発展は加速を続けていて、もはや10年先を見通すことも難しい。だが、わたしたちはSF映画を通してならば、いくらでも未来をシミュレーションできるのである。言い換えれば、SF映画を観るということは、確定していない未来へ向かうタイムマシンに乗っているのと同じなのだ。そう考えると、わたしたちはもっと真剣にSF映画に対峙し、来るべき未来に備えるべきなのではないかと強く感じた。