(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法
著 者:三宅香帆
出版社:笠間書院
ISBN13:978-7-305-70928-8

どうせ読むなら「わかり」たい

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

横松令奈 / TRC学術情報ソリューション
週刊読書人2021年1月8日号


 まず本書のタイトルを見た時に「あるある!」と思う方も多いのではないだろうか。名作と言われる小説が必ずしも読者に多くの共感を呼ぶかというとそうでもない、というかむしろ「なんだかよくわからなかった」となりがちな小説も多い気がする。高校生の頃に「いざ名作に挑むぞ」と図書館で手に取ったものの、頭にハテナマークがついたまま終えてしまった小説がつぎつぎ思い出される。

 そんなことを思い出しながら本書で扱われている二十作のラインナップを見たところ、「カラマーゾフの兄弟」「ドグラ・マグラ」「金閣寺」…などなど、たしかにこれはつまずいた覚えのある読者が多そうなタイトルが並んでいる。その中に私が三度挑戦して結局三度とも最後まで読み切れずに挫折してしまった「キャッチャー・イン・ザ・ライ」があったことから、これは四度目の挑戦なるかも!と本書を手に取った。

 本書が語るのは「真面目な読書法」ではなく「不真面目かつ面白い読書法」だと文中にことわりがあるとおり、手を替え、品を替えて名作に切り込んでいく。本書のタイトルどおりに「読んだけど分からん」で終わらせない、そしてできれば読んで楽しむための技術が解説されている。

 と言ってもあまり難しいことはなく、「あらすじを先に読んでおく」「好みにあった翻訳を選ぶ」など簡単に実践できる手法が多い。逆に本書で解説されることによって、自分が普段小説を読んでいるときにどのような読み方をしていて楽しんでいたのかをあらためて認識するところもあった。

 本書はタイトルどおりに名作に「分からん」となってしまった方はもちろんのことだが、十代~二十代の学生でこの二十作に限らずあまり読書が好きでない方への小説の楽しみ方ガイドブックとして適しているのではないだろうか。文体は軽妙で一作品あたりの解説も約十ページと短めであるし、SNSやブログを読んでいるような感覚で読める。普段読書に親しみのない方にとって新しい扉を開く糸口に繫がるかもしれない。何よりあとがきでも書かれているがとにかく著者の「小説って楽しいんだよ」という好きなことを伝えたい熱いパワーがあふれている。

 本書で取り上げられた二十作の中には恥ずかしながらタイトルを知らなかった小説も何作かあり、それらについては著者の解説にも「なるほど」と合点できなかったところが残念である。今回の二十作以外にも他の小説、特に教科書にタイトルが載っているような名作についてさらに著者の「読み方・楽しみ方ガイド」を読んでみたい。まずは「キャッチャー・イン・ザ・ライ」に四度目の挑戦をしてみようか。